「暗号のような符丁」をありがたがるオーディオ業界のダメ体質

音離れとはどういう意味か?

 あるオーディオ系掲示板で「音離れ」という言葉が出た。

 この言葉、オーディオ・マニアの間では「スピーカーに音がまとわりつく。音離れが悪い」などという具合に使われる。立体的な音場感を指す言葉だ。

 反対に「音離れがいい」というのは、2本のスピーカー間の何もない空間にぽっかり各楽器の音像が浮かび、まるでスピーカーから音が出ていないかのような状態を指す。よく「スピーカーが消える」などと言われる現象である。

 こうした立体的な鳴り方は、空間表現が得意なDYNAUDIOが最も得意とするものだ。だがすべてのオーディオ機器がこういう鳴り方をするわけではなく、またセッティングによっても大きく変わってくる。

 ゆえにマニアにとって自宅のオーディオの音離れがいいかどうか? は、自分のウデの高さを証明する試金石になる。だから音離れがいいことは、マニアの勲章であるかのように扱われる。

 ところがその掲示板である人が、興味深い資料を提示した。かのオーディオ評論家の長岡鉄男氏が、音離れなる言葉は「トランジェント特性」を指すものだ、としていたというのだ。

 トランジェント特性とは、「トランジェントが良い」などというように使われる。意味は、音の立ち上がり/立ち下がりが優れていること。信号が入るとすぐ音が出て、信号がなくなるととたんに鳴り止むことだ。

 例えば楽器の演奏者がドンと音を出したそのタイミングで、オーディオ機器の再生音がスピーディに立ち上がる(音が出る)。一方、演奏者が楽器の音をピタッと止めたその瞬間に、再生音が素早く立ち下がる(消える)ことを指す。

 ひとことでいえば、歯切れがいいことだ。

 マニアの間ではトランジェント特性に優れていることをハイスピードとか、速いなどと称したりする。またトランジェント特性は単にスピードとも呼ばれる。

 さて、ここで議論は紛糾した。当然だ。同じ音離れという言葉を使っていながら、前者は立体的な空間表現について語っている。一方、後者は音離れとはトランジェント=歯切れの良さを指すという。

 つまり音離れという言葉が、それぞれ別の意味で使われているのだ。

 ちなみに低域、中域、高域のスピードが揃っていると(位相の揃い)、立体的な音が出る。ゆえに音離れ=トランジェントとする後者の論拠は、意訳して解釈すれば以下のようなニュアンスかもしれない。

「トランジェント特性が良い音は位相が揃っており、ゆえにスピーカーが消えたかのような立体的な空間表現が可能になる。音離れがいい」

 ただしトランジェント特性に優れていることは、位相の揃いとイコールではない。例えば低音の量感が多くなればなるほど、たちまち低域のスピードは遅くなり、位相が狂う。ゆえに音離れをトランジェントの意味だとする後者の論法には無理があるように思える。

 あるいはひょっとしたら音離れ=トランジェント説は、CDから音楽信号が発され、それがアンプを経てスピーカーに至り、やがては音となって人間の耳に届く行程をソース(CD)から音が離れる=トランジェントと解釈しているのかもしれない。

 または例えば生演奏で演奏者がギターの弦を弾いた瞬間、ギターから音が離れて空気を伝わり人間の耳に届く(音が立ち上がる)過程を模しているのか?

 だがいずれにしろ、こんなふうに暗号を解読するかのように考えないと意味が読み取れない言葉って、どうなんだろう? 音離れなる表現はあまりにも抽象的すぎて意味が伝わりにくい。

 例えば「力感」という言葉を聞けば、音が力強くエネルギッシュな様だとすぐピンとくる。この言葉からは、力強い音が聴こえてくる。だからみんなが瞬時に共通のイメージを持てる。

 だが音離れという言葉からは、音が聴こえてこない。

 だからイメージを共有しにくいし、めいめいが勝手な解釈で別の意味に受け取ってしまう。その結果、混乱が生まれ、コミュニケーションが成立しなくなる。

 オーディオ業界というのは、とかくこのテの暗号のような符丁を使いたがる。わかりにくい表現をありがたがる。だがオーディオの普及・振興を考えれば、もっと初心者にもわかりやすく音が聴こえてくるようなイキイキした言葉を使ってはどうか?

 やたら小難しい言葉を使うのがエラいとされるオーディオ業界。そんな「オーディオは修行だ」みたいな、合理性とかけ離れた古臭い精神主義はもう時代に合わないだろう。

テーマ : オーディオ機器
ジャンル : 音楽

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DYNAUDIOというスピーカーに出会ったせいで、こんなブログをやってます。

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