Nmode X-PM100、天空の城に立つ最強の超プリメイン

こんな速い低音は聴いたことがない
まるで自分が天空の城に立ち、360度、はるか下界を見下ろしているような見晴らしのいい音だ。広大な音場に首を突っ込んでいるような不思議な感覚。初めてDYNAUDIOのC1を聴いたとき、ちょうどそんな感じだった。
こいつは強烈なダンピングの利いた辛い低音が出る。C1の引き締まった低音とまったく同じだ。一瞬にして音が立ち上がり、劇的な速さで収束する。トランジェントのいい速い低音だ。適度な量感もあり、エネルギー感豊かに躍動する。まるでC1と組み合わせるために生まれてきたようなアンプである。
音場の広さと奥行き、立体的な空間表現のよさ。リアルで生々しい音像や驚異的なSNの高さ、透き通るような透明感や解像感が目を引く。まるで顕微鏡で音をのぞいているかのような感覚にとらわれる。圧倒的な情報量と駆動力、カラーレーションのないナチュラルさもすばらしい。
そして何より音の背景の静けさがすさまじい。何もない空間がありありと感じられる。敢然と広がる音のない空間のリアリティに説得力がある。
アナログアンプと区別がつかない滑らかさ
一方、アナログアンプと区別がつかない滑らかさとみずみずしさも大きな特徴だ。
一般に従来のデジタルアンプは音が冷たく、金属的で、音が固かった。だが本機は、ほのかな暖かみすら感じさせる。音がしなやかで柔らかい。デジアンでよくある耳を刺すような痛さなどまるでなく、むしろ高域はまろやかでさえある。
こんなデジタルアンプは今まで聴いたことがない。
初めての試聴時には「よし、アラを探してやるぞ」と意気込んで聴き始めたが……ふと気がつくと音楽に聴き入ってしまい、音を分析・評価することなどすっかり頭の中から消えていた。こんなふうに思わず音楽に浸ってしまう製品は珍しい。歌心のあるアンプである。
100万クラスとくらべても光る音場感
ちなみにPASSやOCTAVE、UNISON RESEARCHあたりの100万クラスのアンプと比較してみると……低域の押し出しと力感ならPASS、真空管とは思えない細やかさと優しさならOCTAVE、艶とコクで選ぶならUNISON RESEARCHという感じだ。
だが音場の広さと立体感、透明感、トランジェントのよさでは、ハッキリX-PM100に軍配が上がる。結論として、トータルでは100万クラスの製品とくらべても遜色がない。
というわけでいま我が家では、このX-PM100が、DYNAUDIOのC1嬢を歌わせている。うちのC1は過去何度か離婚を経験したものの、ついに安住の地を見つけたようだ。私のアンプ探しの長い旅も、これでついに終わったのかもしれない。
だが同時に結局オーディオには「上がり」なんてものはなく、無数の通過点があるだけなんだという気も、今はしている。