我が家のメインシステムがカーステに負けた

ピーター・バーンスタイン『Heart's Content』(2002年録音)
耳をえぐる高域をうまく丸めるカーステ
こないだジャズのCDを買ったのだが、なんとこの盤は我が家の高解像度メインシステムより、カミさんのクルマのカーステレオで再生させたほうが音がよくて笑ってしまった。
その盤とは、現役ジャズギタリスト、ピーター・バーンスタインのアルバム『Heart's Content』(2002年録音)だ。録音エンジニアはオランダ人のMax Bolleman(1944年生まれ)である。
さてメインシステムで聴くとよくわかるのだが、この盤は明らかに主役のギタリストを引き立てるためのミキシングが行われている。すなわちギターの弦をハジくピッキングが(過剰に)キリキリと生々しく録れている。つまり帯域バランスが高域寄りなのだ(ただし演奏自体は最高)。
すると我が家の高解像度メインシステムで本盤を再生させるとどうなるか? ギターのピッキング音やピアノの高音、ドラムのシンバルがカリカリと鋭く耳をえぐってくる。高音にめっきり弱い私の耳では、痛くて聴いていられない(だがそのぶんギターのピッキング音は生々しい)。
要するにギターを過剰にショーアップするミキシングがされているため、その原音を忠実に再現する我が家のメインシステムでは高音が痛くて耐えられないのだ。そのうえ盤の帯域バランスが高域寄りだから逆に低域が足りず、ウッドベースやドラムのバスドラの量感が不足しスカスカの音で鳴る。
ところがこれをカーステで再生させたら、あら不思議。耳をえぐる高域は適度に抑えられ、低域はといえばウッドベースが十分な量感をもって心地よく聴こえる。つまりこのカーステはおそらく低音がズンドコ鳴るJ-POPやHip-Hopに最適化されているため低域が補強され、その量感が増した低域にキツい高域がうまく埋もれて帯域バランスが再調整されているのだ。
まさかカミさんのカーステにこんなすばらしい補正機能(笑)があったとは。びっくり仰天である。と、そんな解説をクルマの中でエンエンとしていたら、J-POPが大好きなカミさんがひとこと。
「そんなの、好みでしょ?」