パイオニア A-50、透明感と繊細さが漂うデジタルアンプ

JBL 4319を鳴らす駆動力がすごい
ハッキリした解像感があり、透明感と繊細さが漂うデジタルアンプだ。ハイスピードで歯切れがよく、デジアンらしい駆動力がある。30万クラスのJBL 4319と組み合わせたが、過不足なく鳴らしていた。こいつはすごい。
音の温度感はニュートラルから、やや寒色寄り。カラッと乾いたドライな音で、高域にかすかに艶がある。こってり系か? あっさり系か? といえば典型的なあっさり味。太いか? 細いか? といえば細くタイトに絞れた音だ。
またデジアンらしく、音のエッジ(輪郭)がクッキリしているのも特徴である。柔らかい音が好みの人には選外だが、硬質でカッチリ明確な音が好みなら候補に入れていいだろう。
分離がよく立体的な空間表現がうまい
さて最大のハイライトは音場感である。このアンブは音の分離がいい。複数の楽器の音が混濁したり、固まったりしない。すなわち音に広がりがあり、立体的な空間表現がうまい。
もうひとつ特筆すべきは、中高域を支配するみずみずしい鮮度感だ。そのため繊細で透明感のあるリッキー・リー・ジョーンズの「Traffic From Paradise」(1993)や、「Flying Cowboys」(1989)がため息が出るほどマッチした。このテの録音がよく静かなソースがぴったりだ。
かと思えば同じシリーズの「A-10」など、下位機にはないエネルギー感もある。ゆえにリトルフィートやジェームス・ブラウン、スライ&ファミリーストーンなど、60年代~70年代のR&Bやアメリカンロックがバリバリ鳴った。繊細でソフトな音源から、ノリのいい激しいロックまで対応範囲は広い。ほとんどソースを選ばないといっていいだろう。
もっとも音の好みは人それぞれだ。たとえば潤いのある音が好みの人には、このアンプのカラカラに乾いた音色は向かない。また厚みや密度感を求める人にも合わないはずだ。そういう好みの人がこのアンプを聴けば、「厚みがない」、「スカスカだ」と感じるだろう。鳴り方に(いい意味での)重さがないのも特徴で、よくいえばもっさり感のない軽快な音だ。
ただし本機が好みにハマれば、かなりおトクな買い物だろう。相対評価するため冗談半分でラックスマンのL-505uXと聴きくらべたが、こと繊細さや空間表現に限ればA-50のほうが明らかに上回っていた。このコストパフォーマンスはおそろしい。
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