PCM1792を2基搭載する贅の音 クリアではっきりした音調がONKYO製品らしい。だが同社10万円以下のCDPとは明らかに格が違う。音の厚みと情報量が別世界だ。音符がみっちり詰まった密度感が心地いい。
TI社バーブラウン製DAC、PCM1792を左右各チャンネルに1基づつ搭載しており、実売10万台前半クラスとしては珍しい贅沢な部材の使い方だ。
ONKYO製品にしては重心が低く、ズシッとした手応えのある低音を聴かせる。適度なボリューム感はあっても曖昧に膨らませず、一定の量感を保ちながらズンと打ち出してくる。制動が利き、よくコントロールされた低音だ。
ベースの音はパキパキした輪郭を出す硬い音ではない。むしろONKYOにしては心持ち丸めの音だ。だがデノン製品のような「丸さ」とは違い、音の滲みなどはまったくない。それでいてしなやかな弾力感をしっかり聴かせる。
ただひとつ気になったのは、ソースがアコースティックなウッドベースであるにもかかわらず、エレクトリックの、しかもTUNEのようなアクティブ・ベース系の現代的な質感に思えた点だ。
個人的には音さえ気持ちよければ「原音忠実再生」なんてあまりこだわりないし、ひとつの音作りとしてこういうのはアリだと思うが、気になる人は気になるかもしれない。試聴で確認してほしい。
とはいえ音数の多さや空間表現、音の分離などいずれも水準をクリアしており、誰が聴いても好みからさほど大はずれはしないだろう。
SOULNOTE sc1.0と比較試聴してみた さて相対評価をするため、SOULNOTEのsc1.0と聴きくらべてみた。するとJeremy Peltのトランペットが耳に叩きつけてくるようなsc1.0に対し、C-7000Rは耳当たりがいい。剥き出しの音が躍動する感じの「荒ぶるsc1.0」に対し、人生経験を積んだ大人のような落ち着きを感じさせる。
一方のsc1.0は若い音だ。血気盛んで元気いっぱい。ギラギラと生気をたぎらせながらリスナーに迫ってくる。対するC-7000Rは細やかでていねい、誤解を恐れずに言えば大人しい音だ。
音像が湧き立つように立ちのぼるsc1.0に対し、C-7000Rはベースとドラムスがズシッと下方へ沈み、全体に音像がぐっと腰を落として鳴る。音場はどちらも適度に広いが、中音域が前に出るぶんsc1.0のほうが奥行きを感じさせる。
くらべるとsc1.0は高域が耳につき、ソースによってはベースがやや膨らむが、破天荒な音の勢いがある。sc1.0の方が音場に立体感があり、音が前へ飛んでくる。音像が手前にある的を打ち抜いてくるような強い打撃感がある。
洒脱なリッキー・リー・ジョーンズが似合う 実は最初、C-7000Rだけを聴き、「ONKYO製品にしてはエネルギー感があるな」と意外に感じた。だがsc1.0と聴きくらべると、やはり本機は泥臭くノリのいい楽曲より、リッキー・リー・ジョーンズ「Flying Cowboys」(1989年)のような繊細で洒脱な透明感のあるソースを再生させたほうが魅力的であることがよくわかる。
ハッキリくっきり、クリアでごまかしがない。ONKYO製品の中では珍しく骨太で厚みや情報量もある。高域が耳に刺さらず、穏やかなのも個人的に気に入った。実売10万台クラスに貴重な一石を投じる、国内メーカーの有力な選択肢が名乗りを上げた感じだ。
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