LUXMAN L-507u vs L-509u、AB級・師弟対決のゆくえは?

LUXMAN L-507u

LUXMAN L-509u
血気盛んな若武者と老成した剣の達人
前々回で「国内プリメイン最高峰」と勝手に認定したLUXMAN L-509uだが、同じAB級でひとつ下位機種のL-507uと対決させてみるとどうなるか? これが今回のお題である。
実際、L-507uの方もデキがよく、以前このブログで試聴レビューしたときには思わず「実質50万クラス!」と口走ってしまった。さてその両者を並べて聴きくらべると、思わぬキャラクターのちがいが見えてきた。
ひとことでいえばL-507uはエネルギッシュで血気盛んな「若い音」、対するL-509uは悟りを開いた剣の達人のような、細やかな気配りのある老成した音だ。
組み合わせた機器は、スピーカーがFOSTEX G1302、CDPはLUXMAN D-06。
押しが強く低域の量感があるL-507u
L-507uと509uの共通点は、ラックスマンらしいどっしり太い中低域と重みのあるノリ、スピード、解像度を共存させているところだ。ニュートラルやや寒色寄りと感じさせる音色も近い。
一方、両者のちがいでまず目につくのは、帯域バランスと音のインパクトだ。L-507uは509uより、低域の量感と押し出しの強さがある。
ただそのトレードオフとして、L-507uは低域が膨らみがちなソースを再生させるとベースラインがやや混濁し、音階が聴き取りにくくなる。誤解を恐れずに言えば、L-509uより低域が暴れる。そういう元気な鳴り方を「力感やエネルギー感がある」と感じて好みに思う人も多いだろう。(私もそう感じた)
このへんは以前記事にした「ある種の歪みや濁りがグルーヴを生む」の法則だが、説明すると長くなるので興味のある人はこちらの過去記事を読んでほしい。かんたんにいえばL-507uは、いい意味でラフな部分があるがゆえにダイナミックで躍動的なのだ。
音の粒がきめ細かく緻密なL-509u
一方、L-509uはラックスマンにしてはタイトな音だ。507uより全体に引き締まっている。粒がきめ細かく緻密な鳴りで、高級機ゆえの落ち着きを感じさせる。L-507uがいい意味で元気に暴れるのと対照的だ。
低域の解像度はL-507uより高く、ベースの音の輪郭も適度にある。必然的に低域のキレもいい。帯域バランスはTrebleをL-507uより上げ気味に、かたやBassを507uよりやや絞ったようなトーンである。
つまりL-507uよりアクセントが上の帯域にあり、L-509uのほうが高域のインパクトが強い。そのためドラムスのブラッシングやシンバルが耳に残るし、スネアのリムショットなどもアタック感が強い。
ただこのへんはちょっと高音が強いとすぐ耳が痛くなるタイプの人には向かないかもしれない。試聴に使ったスピーカーが純マグネシウムツィーターを採用したG1302だったせいもあるだろうが、個人的には高域がやや耳に刺さった。
とはいえ逆に華やかでブライトな高域が好きな人にはいい。「日本人は高音が派手でなければ納得しない人が多い」と聞くが、とすれば日本のオーディオ機器は高級機ほど高域にこだわった音作りをしているのかもしれない。
まとめると、L-507uはエネルギッシュな音が好きな人なら「好みの問題」といってしまいそうなほどコストパフォーマンスがいい。かたやL-509uのトータル的な完成度も高く、リスナーにとっては悩ましい選択になりそうだ。
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