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DYNAUDIO EXCITE X12、繊細なのに躍動するDYNAの不思議

DYNAUDIO_EXCITE_X12

透明感と力強さを併せ持つ

 オーディオの世界はあちらを立てればこちらが立たず。ほしい要素のトレードオフがつきまとう。

 たとえば透明感や繊細さで製品を選べは躍動感がないし、ハイスピードな機器ほど低音の量感がない。キレのある製品はややもすると腰高で、ドーンと重心が低いのに歯切れがいいってあまりない。

 こんなふうに繊細さや透明感と、それに相反する要素である躍動感や力強さを併せ持つスピーカーは(特に廉価な製品には)きわめて少ないが、これらをすべて同時に兼ね備えているのがDYNAUDIOである。

 そのDYNAUDIOにあってEXCITEシリーズは、生産終了した最下位クラスのAudienceシリーズを継ぐ形で投入された製品群だ。さらに下位のDMシリーズが登場するまで、最もこなれた価格帯をフォローする位置づけだった。

演奏者の立つ位置がわかる空間表現が得意だ

 このEXCITE X12は14.5cmウーファーを搭載し、EXCITEシリーズでいちばんコンパクトな製品だ。先代のAudienceシリーズとくらべ、ウーファーのセンターキャップが小さく、またユニットの直径がフロントバッフルの幅ぎりぎりに設計されている。

 肝心の音はDYNAUDIOらしく解像度が高く、ハッキリした音調でありながらエネルギー感がある。音場が広く情報量も多い。音楽ジャンルを選ばず何にでも合うし、あたかも目の前でバンドが演奏しているかのような音像の生々しさがある。

 下位機のDM2/6とくらべ低音の量感があるが、DM2/6はタイトなぶんキレがよく(これもトレードオフの関係だ)、まあ好みの問題だろう。

 同様にDYNAUDIO共通の特徴として、立体的な空間表現も得意だ。例えば両スピーカー間の中央にヴォーカルが定位し、右にギター、左にピアノ、右上にシンバル、中央の奥にドラマーがいるというふうに、各楽器を演奏するプレイヤーの立つ位置がわかる。まるでホログラフみたいなスピーカーである。

10万を切るライバルが多い高CP時代

 先代のAudience 42はヨーロッパ的な翳りと愁いをまといながら、ソースに応じ明るさも表現する凛とした貴族だった。オーディオ人口の裾野を広げるための戦略商品で、メーカーとしては売っても儲からない、あり得ない価格設定(10万円)がされていた。それとくらべればこの後継モデルは「適正」な費用対効果になったといえるかもしれない。

 ただ今はB&W 685をはじめ5万~10万ゾーンに好機種がひしめく時代だ。そう考えればこのスピーカーがもし10万円以下だったら革命を起こせたのに、と思わないでもない。(ああ、今はDM2/6があるか)

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tag : DYNAUDIO_EXCITE_X12Audience42DM2/6B&W_685

B&W 685、実売5万クラスの覇者

B&W_685

B&Wらしく「引っ込んだ帯域」がない

 シンバル類がくっきり鳴る高域から量感のある低域まで、音がイキイキしているレンジが広い。「生きたレンジが広い」とは低音が深く沈み込むとか、高音が上まで伸びるみたいな意味ではない。「引っ込んだ帯域」がないという意味だ。

 こんなふうに各帯域が負けずに自己主張しているところはいかにもB&W的である。

 高域は(高い音に過敏な私の耳には)B&Wらしくきらびやかに聴こえるが、B&Wの他モデルとくらべ、でしゃばる感じはない。むしろB&W一族の中では大人しめだろう。

 確かに兄貴分のCM1やCM5の方が世間的にはハイグレードな高音だ。くらべると、特にCM5はドラマーが高級なシンバルを使っているかのように聴こえる。だが価格差を考えれば質感は充分だし、特に鋭い高域が耳に刺さるタイプの人にはちょうどいいかもしれない。(現に私には向いている)

低音は量感のあるふっくらタイプ

 一方の低域はサイズに似合わずかなり量があり、やわらかくふっくらしている。そのため背後の壁までの距離を比較的気にしなくていいフロントバスレフとはいえ、セッティングにはそれなりに気を使う。ていねいに設置しないと低音が膨らみ、こもってボケる。

 たとえば家電量販店の棚にポン置きされた個体の音を聴いても、このスピーカーの真価はわからないだろう。CM1ほど気難しくはないが、ぜひスピーカースタンドに設置してやり、低域を締める方向で使いたい。

 さてアンプはいろんな機種で試聴したが、この豊満な低音をタイトに鳴らしたいなら、価格バランスの取れた機種の中ではONKYO A-5VLあたりがベストだろう。もう少し色味がほしければマランツのPM7004、PM8004もいい。これらの機種なら低域は膨らまない。

 またこのスピーカーもご多分にもれず、アンプを奢れば際限なく木に登る。試しにマランツのセパレートで鳴らしてみたが、もうとんでもない音が出た。潜在能力はかなり高そうだ。

B&Wにしては暖かみがあり明るいカラーだ

 では一方、音場感はどうか? ちゃんと奥行きも表現するし、CM1と同じく音場は奥にできる。音像がハッキリ前に出るCM5とくらべ、空間が鳴ってる感じだ。

 このほか特徴的なのは温度感だ。B&Wの製品は基本的に寒色系で暗めの音色だが、この685はちょっと異端児だ。やや暖かみがあり明るいカラーである。

 ただ暖色系というほどの温度感はない。B&W的なヒヤリとするシンバルが耳につくぶん、ニュートラルやや寒色寄りぐらいに(私には)聴こえる。

10万以下ではコストパフォーマンスNo.1

 まとめよう。

 685はB&Wっぽい高域の嫌らしさ(ここは主観でございます)を感じさせないし、個人的にはB&Wって少し聴き疲れするのだがそれもない。

 また厚みやパンチ力があり、ソースを選ばないところもいい。トータルでいえば、実売5万円クラスではDALI LEKTOR 2、JBL 4312M IIとならび頂点だろう。10万円以下のクラスで見ても、DYNAUDIO DM2/6、FOSTEX GX100とともにコストパフォーマンスはナンバーワンだ。

 というか、このスピーカーがこの値段で買えるってアリなわけ?

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tag : B&W_685CM1CM5ONKYO_A-5VLPM7004PM8004DALI_LEKTOR_2JBL_4312MIIRX1DYNAUDIO_DM2/6

BLADELIUS Thor MkⅡ、アンプは音楽の演出者である

BLADELIUS_Thor_MkⅡ

C1では音場は奥にできる

 つかみどころのない鵺のようなアンプだ。

 たとえばオーディオ機器を試聴する場合、確認すべきポイントはだいたい決まっている。

 定位は明確か? 音像にリアリティはあるか?(シャープさ、大きさ、楽器音の質感)、音場は広いか?(奥にできるか/前にできるか)、空間表現は立体的か? 上下左右だけでなく奥行きをよく表現するか? 音色は暖色系か、寒色系か? トランジェントはいいか? 解像度は高いか?(帯域別ではどうか?)、などなど。

 だがこのアンプの場合、「これだ」という明確な個性を割り出しにくい。今まで我が家のDYNAUDIO CONFIDENCE C1のほか、FOSTEX G2000、B&W CM5、PMC TB2iなどと組み合わせて試聴したが、セットごとに鳴り方がかなりちがうからだ。

 たとえば同じBLADELIUSのCDP、Freja mark IIを使いC1と組み合わせると、音像がズドンと前に飛んでくる鳴り方ではない。ふんわり広がり、音場は奥にできた(※1)。C1はアンプの個性に合わせて柔軟に鳴るから、これがThor MkⅡの正体だろうと判断した。

 だがCM5とESOTERIC X-05の組み合わせでは正反対だった。ギターやピアノ、ヴォーカルなど、特に中音域がグイグイ前に出る。とすればこれはCM5固有の色に見えるが、それにしてもあまりに鳴り方が逆なので断定するのがむずかしい。

空間表現はあまり得意じゃない?

 ほかにもグレーなポイントはある。たとえばC1と組み合わせたときは分離感がいまひとつで、音像がたがいにまとわりついていた(※2)。C1はこんな鳴り方はしないから、こりゃアンプの特徴としか思えない。

 だがCM5と組み合わせると少なくとも楽器の分離はよかった。ただし演奏者の立ち位置が問題で、複数の楽器音が両スピーカーの中央付近でなんとなく団子になる。演奏者それぞれの位置が三次元的にわかるような鳴り方ではない。

 この時点で、立体的な空間表現はあまり得意じゃないアンプなのだろうと考えた。(もちろん組み合わせるCDPによっても音場感は変わるから即断できないが)

 では個人的にいちばん気になる低域はどうか? C1とのコンビでは低音が妙にやわらかく、ほんわか、のほほんと鳴っていた(※3)。いや、もちろんこれはこれでアリだ。聴く音楽によっては独特の味が出るだろう。

 しかし個人的な好みでいえばグッ、グッと食い込んでくるダイナミズムに欠け、わたし的には不満な低音だった。ちなみにC1はアンプ次第で質の高い極上の低音を聴かせるスピーカーである。

 では一方、CM5で聴く低音はどうか? 今度は打って変わって、「おー、兄弟機・CM1のブーミーな低音とはダンチじゃん」てな感じだった。CM1の曖昧な低音とちがい、コリッとした芯がある。輪郭もほどよく立ち、ベースの音階もはっきり聴き取れた。

 このへんは組み合わせたCDP(ESOTERIC X-05)の個性が出ている感じはするが、それにしてもC1で聴いた低音とはちがいすぎる。

 う~ん。

アンプに色がないとスピーカーの特徴がそのまま出る

 もちろんスピーカーがちがえば鳴り方が変わるのは当然だ。だが、どうも「あり得ない変わり方」をしている感じだ。

 たとえばアンプに色づけがない場合、スピーカーの特徴が脚色なしでそのまま出る。すると当然、スピーカーによって鳴り方はかなり変わる。

 だが今回はどう考えてもこのパターンではない。(※1)についてはスピーカーの特徴を素直に出している感じだが、(※2)や(※3)はC1の個性や力不足ではないからだ。しかしアンプがC1を駆動し切れてないということもないだろうし、結局よくわからなかった。

 なおFOSTEX G2000との組み合わせは短時間の試聴だったため参考外だが、C1とは対照的に「すごくいい」と感じた。またPMC TB2iはスピーカー自体のキャラが濃いので、アンプの目利きとしてはあまり参考にならない。

翳りのあるヨーロッパのピアノトリオがハマる

 さて結論だ。BLADELIUS Thor MkⅡはどんなアンプか? 今回はちとむずかしいが、少なくとも解像度に関してはなかなか高い。

 だが生真面目な国内メーカーのアンプとちがい、定規で測ったような物理特性の優秀さで聴かせるアンプではない。「それより音楽を聴けよ」と語りかけてくるような感じだ。雰囲気で聴かせるといえばネガティブに誤解されそうだが、音がふんわり辺りに満ち、言葉通り「音楽の演出者」という印象である。

 その証拠に静謐感のあるしっとりしたヨーロッパのピアノトリオがよく合った。さすがにヨーロッパ・スウェーデンの機材である。音楽性は、お国柄によくあらわれる。

(脂っこいアメリカのピアノトリオでなく)繊細なヨーロッパのピアノトリオがハマるあたり、どちらかといえば動的な表現より、静的な描写のほうが得意な感じだ(ただしスピーカーによる。文末の追記参照)。たぶんソースがアンプのキャラに合えば気持ちよく聴けるタイプなのだろう。残念ながら私がよく聴くソースはあまりピンと来なかったし、C1との相性もいまひとつだったが。

 それにしてもオーディオってやつは本当に好みの問題だなぁ。


(追記) 2011年7月19日付

 その後もあれこれ思考してみたが、C1が(※2)や(※3)のような鳴り方をしたのは原因不明であるものの、やはり基本的にはスピーカーの個性が脚色なしで素直にそのまま出るアンプだ思う。

 その証拠にひんやり冷たく固い音でカッチリ鳴ったCM5に対し、(本文では割愛したが)PMC TB2iはやわらかく暖かみのある音色でエネルギッシュに熱く歌った。同じアンプで鳴らしてこれだけ音が対照的なのは、スピーカーの個性がよく出ているからにほかならない。

 すなわちこのアンプは何も考えずに好みのスピーカーを組み合わせるだけで、簡単にオーナーの好きな音が出せるタイプだ。スピーカーとアンプの相性や組み合わせたときの音の変化をあれこれ考えなきゃならない機器は多いが、こういう素直なアンプは大助かりである。

【関連記事】

【アンプ選び試聴記】 DYNAUDIO CONFIDENCE C1をお見合いさせた

tag : BLADELIUS_Thor_MkⅡDYNAUDIO_CONFIDENCE_C1FOSTEX_G2000B&W_CM5PMC_TB2iCM1

KRELL KAV-400xi、涼やかな高域と力感ある低域の饗宴

KRELL_KAV-400xi

KRELL=野獣みたいなアンプと思いきや

 我が家のDYNAUDIO CONFIDENCE C1をあちこちのショップへ持ち込み、10機種ほどのアンプをランキング形式で紹介した『アンプ選び試聴記 パート1』で栄光の暫定1位に輝いたアンプだ。(試聴記のパート2も現在10機種以上ネタがたまり、準備中なので請うご期待)

 さてKRELL KAV-400xiである。予想に反し、静かな中にも力強さが同居したアンプだった。いやKRELLといえばゴリッとしたイメージがあったので、予想に反したのは「静かな」の部分だ。中高域がえらくスッキリしており、思ったより透明感があり見通しがいいのだ。

 そのためヌケがよく、ノリのいい楽曲は軽快で颯爽としている。かといって軽いばかりでなく、低域には力感がありタイトでキレもいい。たとえば20万クラスのアンプとはバスドラのキレが決定的にちがう。

 で、ストンストンとジャストビートで俊敏に踏み込むSteve Jordanのフットペダルが気持ちよく決まった。また思ったより低域の解像度が高いのも発見である。

泥臭いR&Bだけでなく欧州のピアノトリオもいける

 独壇場だったのは、伸びやかで熱い歌を聴かせたAretha Franklinだ。鳴り方が大らか、かつ開放的で「やっぱりアメリカのアンプだなぁ」と感じさせた。

 かと思えばMichel Petruccianiの初期作やIgor Prochazka、Stefan Rusconiみたいなヨーロッパのピアノトリオがもつ陰影感もうまく表現する。高域が涼やかなぶん、欧州的な翳りや愁いが雰囲気よくハマるのだ。

 アメリカ的な泥臭く熱い音楽だけでなく、しっとり影のある楽曲もいけるマルチな奴。試しにFOSTEXのG1302でも鳴らしてみたがバッチ・グー(はるかな死語)だった。KRELLでは現行のプリメインアンプ、S-300iより、個人的にはこっちが好みだ。みなさんも中古で安く見つけたらゲットすべし。

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【アンプ選び試聴記】 DYNAUDIO CONFIDENCE C1をお見合いさせた

tag : DYNAUDIO_CONFIDENCE_C1KRELL_KAV-400xiFOSTEX_G1302KRELL_S-300i

オーディオ不感症と絶対音感

 最近うちの相方から、「ウケを狙って私を食い物にしてる」との抗議が殺到している。

 そこで相方の名誉のために書き添えると、彼女は音楽はミスチルしか聴かない。

 しかも車の中でしか音楽を聴かないのだが、なのに鍵盤楽器を操る絶対音感の持ち主だ。相手が爪弾く楽曲の頭を1小節聴いただけで、他人とすぐに共演できる。(もちろん打ち合わせや譜面もなしで)

 言ってることとやってることのギャップが、これほど大きい人間を私は知らない。


(しまった。また抗議が殺到しそうだ)

芸術は理解されない

 ジャズを知らないうちの相方がこう言った。

「なにこれ? 唸ってるじゃない」

「キース・ジャレットだよ」

「最低。気持ち悪い」


(追記)

 この記事を公開した後に本人から聞いて初めて知ったのだが……うちの相方が「気持ち悪い」と言ったのは、ピアノを弾きながら唸り声を上げるキース・ジャレットのその声が「岩崎宏美のシングル『万華鏡』の背後に混入していた心霊のうめき声」的な怪奇現象だと思ったからだそうだ。

 そっちのオチかい。
プロフィール

Dyna-udia

Author:Dyna-udia
DYNAUDIOというスピーカーに出会ったせいで、こんなブログをやってます。

SP:Dynaudio Confidence C1 platinum,
Pre AMP:Viola Cadenza,
Power AMP:Viola Symphony,
DAC:SOULNOTE dc1.0,
CDT:SOULNOTE sc1.0

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