fc2ブログ

ケンウッド LS-K1000、立体的な「空間描写」のリアリティ

ls_k1000

やわらかく包み込む暖かみのある音

 リスナーをやわらかく包み込むような、暖かみのある音色だ。ほのかな艶と潤いがあり、ふくよかでふっくらしている。モニター系のスピーカーにありがちな「音を聴かされる」感じがなく、ゆったりリラックスして音楽を楽しめる。

 空間表現が巧みで、立体的な鳴り方をするのも特徴だ。前に一歩出たリード楽器と、その背後で演奏しているバンドとの間にある奥行きの描写もうまい。海外製品も含めた同クラス(実売3~4万円)のスピーカーの中では、LS-K1000の「空間力」はかなり上位に食い込むだろう。

シンバルレガートのリアリティに目を見張る

 同じケンウッドでひとつ下位機種のスピーカー、LS-K711ともくらべてみた。するとクラスが違うぶん、音の緻密さや密度感、低音の量感にそれなりの差があった。特にLS-K1000はツィーターがよく、ドラムスのシンバルレガートなどは下位のLS-K711とくらべ圧倒的なリアリティを感じさせた。(ただしLS-K711は、同じ価格帯の製品の中ではかなり健闘しておりコストパフォーマンスが高い)

 一方、低域はたっぷりとした量感があり、音の角を立てない丸くて太い音調だ。ひとことでいえば「まろやか」である。エッジの利いた鋭くタイトな低音より、ゆったり豊かに鳴る低音の方が好みの人には向くだろう。

このスピーカーは生かすも殺すもセッティング次第だ

 ただし量が多い上に丸みのある低音であるため、中域の下から低域にかけての帯域がややもするとボケ気味になる。そこでスピーカースタンドにしっかり設置し、低音の輪郭の滲みをなくし、キレのよさを確保したい。特にこのスピーカーの場合、スタンドへの設置は必須だ。

 たとえば私は純正の木製スタンド「SR-K800」にセットした状態で聴いたが、それでも低域はややあいまいな鳴り方だった。低音をもっとタイトにキレよくしたいなら、木製でなく金属製のがっしりしたスタンドを選ぶのも一案だろう。(逆にやわらかな響きを豊かにしたければ木製のほうが向く)

 もし予算やスペースの都合でスタンドが無理でも、できる範囲でしっかり設置したい。たとえば棚の上に置くならオーディオボードを敷き、その上にインシュレータを置いてスピーカーを設置するなど、セッティングには十分注意しよう。このスピーカーは生かすも殺すもセッティング次第だ。

独特の音色と空間表現が気に入れば選ぶべし

 ここ数年、低価格でコストパフォーマンスの高いスピーカーが続々登場している。特にこの製品のような5万クラスの価格帯は激戦で、海外ブランドにはいくらでもいいスピーカーがある状況だ。

 そのなかでLS-K1000を選ぶ理由は何か? たとえば同じケンウッドのレシーバ・R-K1000-Nの購入を検討している人や、冒頭に書いたようなこのスピーカー独特の音色や空間表現がツボにきたなら、LS-K1000はいい選択だろう。

【関連記事】

『ケンウッド R-K1000、太く柔らかな響きにまったりする』

『ケンウッド R-K711+LS-K711、合計5万円以内の実力やいかに?』

tag : ケンウッドLS-K1000LS-K711SR-K800R-K1000-NR-K711

アンプは「電源部」で選べ

「駆動力のあるアンプでないと、そのスピーカーは鳴らせないよ」

 オーディオを趣味にしていると、こんなセリフをよく耳にする。つまり駆動力の高いアンプほどスピーカーの実力を存分に発揮させ、イキイキと鳴らしますよ、というわけだ。

 実際、駆動力のあるアンプでスピーカーを鳴らすと、弾むようなエネルギー感や躍動感、力強さを感じさせる。

 だが駆動力なるものがいったい何を意味するかについては、実は技術的な裏付けがあるわけでもなければ、オーディオ業界としての統一見解が存在するわけでもない。駆動力とは、鵺(ぬえ)のように「なんだか得体の知れない概念」なのだ。

 たとえば何社かのオーディオメーカーは「瞬時電流供給能力」という言葉を使っている。アンプが瞬間的に大量の電流をスピーカーに送る力のことだ。ただし「瞬時電流供給能力こそが駆動力を意味するのだ」とはメーカーは明言してないし、それが客観的な指標として定義づけられているわけでもない。

 てなわけで今回使う「駆動力」なる言葉についても、便宜上、私の個人的見解であることをまずお断りしておく。

トランスとコンデンサーの容量が決め手だ

 アンプはCDプレーヤから音楽信号を手渡され、それに合わせて電流をスピーカーに送り込む。で、その電流がスピーカーの振動板を動かし、空気が震えて音が出る。こんなふうにスピーカーを動かすアンプの駆動力は、そのアンプがどれくらいの電流供給能力をもっているか? に左右される。

 そしてアンプが電流を送り出す能力がどれぐらいあるか? を推し量る手がかりになるのが、アンプに搭載されている電源部の心臓に当たる、トランスとコンデンサーの容量である。トランスとコンデンサーの容量の大きさを見れば、アンプの駆動力が(おおざっぱにではあるが)わかるわけだ。

 具体例をあげよう。

 ATOLLのIN100SEというフランスのアンプがある。この製品は20万を切る価格だが、世間で「鳴らしにくい」といわれるDYNAUDIOのスピーカーを鳴らせる。

 このIN100SEの電源トランスの容量は、660VAだ。ではこの容量はどの程度のクラスなのか? たとえばラックスマンのプリメインアンプの最上位機種、L-509u(約70万円)でも580VAだ。つまりIN100SEのほうが容量が大きい。またアキュフェーズのプリメイン中核モデル、E-350(約37万円)も550VAと、IN100SEより下回る。

 一方、「鳴らせないスピーカーはない」といわれ、駆動力が高いSOULNOTEのda1.0(約25万円)になれば、700VAとIN100SEの660VAをわずかに上回る。同じSOULNOTEの最上位フラッグシップ機、ma1.0(約36万円)も同様に700VAだ。

価格は目安になるがすべてではない

 さて一方、ATOLL IN100SEのコンデンサーの総容量は、30000μFだ。これがどのくらいのレベルかといえば、前出のラックスマン・L-509uが、40000μF。だがマランツのプリメインアンプの最上位機種、PM-11S2(約40万円)でも、22000μFなのだ。つまり30000μFのIN100SEが上回っている。

 一般にオーディオ機器は、価格だけで単純にグレードが判断されがちだ。だがこうして仕様を比べてみると、価格だけではわからない情報が手に入る。

「えーっ、トランスとかコンデンサーとか、意味わかんないよ」なーんて言うなかれ。試しにあなたが購入候補にしているアンプのカタログやメーカーのホームページで、仕様をざっと見てみよう。そこにトランスやコンデンサーの容量が書いてあれば、そのアンプを買うのがトクかどうか? を見極める手がかりになるはずだ。

 なおトランスやコンデンサーの容量と意味について、わかりやすいサイトがあるので以下にひとつだけ参考までに挙げておこう。

『パワーアンプの電流供給能力を考えてみよう -スピーカーの電気はどこから来るの?-』(オーディオデザインのコラム)


(追記)

 コンデンサーは容量の大きさだけでなく、アンプに「どんな組み込み方をされているか?」も大きなポイントだ。

 たとえば小容量のコンデンサーを抵抗に対して並列に「たくさん」配置すると、トランジェント特性(音の立ち上がり・立ち下りの速さ)がよく、ハイスピードで歯切れのいい音になる。ハイスピードを売りにするSOULNOTEのアンプ群はみんなこの設計だ。

 小容量のコンデンサーは、蓄電・放電にかかる時間が短くてすむ。だから曲調の変化=音楽信号の変化に機敏に反応し、瞬時に電流を供給できる。この場合、小容量であるぶん数をたくさん配置する(それだけ総容量が大きくなる)のがポイントだ。こうしたアンプの仕様もカタログに書かれていることがあるので、よく見てみよう。

【関連記事】

『ギターの弦を弾く力は「駆動力」、鳴り響く弦を止める力が「制動力」』

『その音は本当にスピーカーの実力か?』

その音は本当にスピーカーの実力か?

 私は専門知識がないのでとにかく試聴から入る。すべては「自分の耳で聴いてどうか?」だけが頼りだ。

 だがショップでそのスピーカーをちゃんと鳴らす駆動力のないアンプと組み合わせてしまい、ひどい音しか出ず、「なんだこのスピーカーは?」と思ってしまうことがある。それはそのスピーカーの本当の実力じゃないのに、だ。

 たとえば前にJBL 4428をLUXMANの505uで鳴らし、「なにこのベースとバスドラのもたり感は?」と唖然としたことがある。だがアンプを同じLUXMANの550A2に替えると、もっさりしていた低域がたちまち躍動した。

 またATC SCM19をLUXMANの550A2で聴くと、ベースがボワボワで音に芯がなく輪郭が滲みまくる。単に音が出ているだけだ。「なにこれ?」と思うのだが……試しに同じLUXMANのひとクラス上のアンプ、590A2に替えてみると、密度感とエネルギー感のあるすばらしいベースラインに変身した。

スピーカーをまともに鳴らせるアンプを選ぶには?

 これらは必ずしもスピーカーの能率の問題ではない。じゃあ何かといえば、たぶん理論立てて数値化などはされてない世界の話だ。

 いや、厳密に言えばアンプのトランスやコンデンサーの容量とかの話なんだろうけど、「トランスの容量が○○以上のアンプはあのスピーカーとこのスピーカーを鳴らせます」なんていうふうに公式化などはされてない。

 とすれば前述したような試聴体験を自分の中でひたすらデータ化し、データベースとして蓄積して行くしかない。

 こういう経験をたくさん積み、ひとつでも多くの機材の音とその組み合わせを聴いてみる。で、失敗しては、また別の機器とセットにしてみて「今度はどうか?」とやってみる。と、そのうちに「相場観」みたいなものができて行く。

「何事も経験が大切だ」なーんて言うと平凡だし、心に刺さらないんだけど……案外、うんざりするような平凡の繰り返しの中に「本当」が浮かび上がるものだ。

tag : JBL4428LUXMAN505u550A2ATCSCM19590A2

プロフィール

Dyna-udia

Author:Dyna-udia
DYNAUDIOというスピーカーに出会ったせいで、こんなブログをやってます。

SP:Dynaudio Confidence C1 platinum,
Pre AMP:Viola Cadenza,
Power AMP:Viola Symphony,
DAC:SOULNOTE dc1.0,
CDT:SOULNOTE sc1.0

最新記事
カテゴリ
DAC (4)
メールフォーム
※オーディオ購入の個別相談には応じかねます。ご了承下さい。

あなたの名前:
あなたのメールアドレス:
件名:
本文:

全記事一覧・表示リンク

全ての記事を表示する

ブログ内検索
※このブログの記事の中から検索します
月別アーカイブ
最新トラックバック
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード