B&W CM9、広がる音に包み込まれる幸せ

ヨーロッパ的な翳りや愁いが漂う
力まかせにエネルギーを放射するパワーヒッターじゃない。ヨーロッパ的な翳りや愁いを漂わせ、リリカルで繊細な表現が得意なスピーカーだ。
同じB&W 800シリーズのような重々しさやある種の暑苦しさはなく、サラリと軽やか、寒色系であっさり涼しげな端麗辛口だ。
音場が広く、リスナーは広がる音に包み込まれるような感覚が味わえる。空間表現もよく立体的で、スケール感も豊かだ。
組み合わせた機器はアンプがMarantz PM-11S2、CDプレーヤーは同 SA-13S2。
ブライトで華やかな高音はお好き?
ブックシェルフ原理主義者の私の耳には、たいていのトールボーイは低音がブーミーに聴こえる。だがこのスピーカーはちがった。たとえばベースの音は適度なお肉がありながら、音の輪郭をにじませず音階がハッキリ聴き取れる。
一方、高域(特にシンバル)は私の耳にはややハリがありすぎるが、ブライトで華やかな高音が好みの人にはハマるだろう。
気だるい物憂さが似合うセクシーなスピーカー
試聴用のCDを15枚くらい持ち込みいろいろ試聴したが、ソースが変わるたびに毎回、新しい発見があった。
音色からすれば温度感の低いECM系ジャズや、80~90年代の涼やかなRickie Lee Jonesあたりが合うだろうと思っていたが(実際その通りだったが)、途中で50年代の超ウォームな女性ジャズヴォーカル(Ella Fitzgeraldとか)が異様にマッチすることを発見し、とても驚いた。これがまたものすごくいいのである。
50年代という年代からして録音はアレだし、温度感もスピーカーの体質と真逆なのだが、Ellaが歌う楽曲の気だるい物憂さがCM9に「ど真ん中ストラァーイクッ!」なのだ。
あらいやだ、大人の女性の艶やかさや色気が出るセクシーなスピーカーだったんですね。いやはや、試聴は繰り返してみないとわからんもんです、はい。
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