SOULNOTE sa3.0、ぶっちゃけエクセレントである

SOULNOTE sa3.0(シルバーもあり)
805 Diamondを軽くドライブする駆動力
B&W 805 Diamondは、肉厚で膨らみ気味に鳴るアクの強いスピーカーだ。いままでDENONのPMA-2000SEやMarantz PM-13S2、PM-11S2などで聴いたが、制動力のあるPM-11S2ならまあなんとか、という感じだった。低域が暴れるのだ。
そのじゃじゃ馬がいま目の前で、まるで借りてきた猫のように素直な音で鳴っている。
手綱をさばき乗りこなすのは、2010年10月20日に発売されたばかりのSOULNOTE sa3.0だ。
太く肉厚な低域をビシビシ制動する
実際、sa3.0は、805 Diamondの奔放な低音を驚くほどビシビシ制動していた。たとえばベーシストが鳴り響く弦をリズミカルにミュート(消音)すると、奏者の狙い通りのタイミングで音がピタッと止まる。逆に立ち上がりも速く、トランジェントのいいアンプの見本みたいな鳴り方だった。とにかくこのアンプの制動力はハンパじゃない。
だが駆動力/制動力に優れたデジタルアンプならほかにもある。このsa3.0がひときわ「音楽的」なのは、低域をキュッと引き締めながらもその低音が躍動していることだ。低域がグルーヴしてない既存のデジアンとくらべ、音符のひとつひとつがエネルギッシュに跳ねている。音が生きているのだ。
いわゆる引き締まった低音とは、音がスカスカに痩せているせいで結果的に量感が少ない低音のことではない。それは死んだ音だ。
そうではなく、低音の量感自体はギュッと圧縮されていながら密度感があり、そこに含まれる音の一粒一粒がグリグリとはち切れんばかりに躍動している状態。これが本当の「引き締まった低音」だ。そしてsa3.0が805 Diamondから引き出した低音は、まさにそういう音だった。
一方の中高域はデジアンらしく涼やかに澄み渡り、一点の曇りもなくみずみずしい。モーダルなジャズピアニスト、Kevin Haysの透明感あふれるピアノがデリケートな静謐感をまといながら歌っていた。
805 Diamondってこんなに空間表現がうまかった?
また定位感や音場感に関しても、「805 Diamondってこんなに空間表現がうまかったの?」とあらためて驚かされた。
いくら立体的に鳴るスピーカーでも、相棒が悪いと十分に能力を発揮できない。スピーカーを鳴らすアンプやCDPが平面的な音を出す機種だと、全体の足を引っ張る。その結果、ハンパな音場感しか得られない。
だがsa3.0と805 Diamondの組み合わせでは、各楽器があるべき位置にバチッと定位する。そして見通しのいい音場に三次元的なバンド演奏が響き渡る。「オーディオで空間を造形する」とはこういうものか、と思わせるような鳴り方だった。
デジアンは無機的で味気ない?
さてsa3.0のもうひとつの魅力は、「デジアンは無機的で味気ない」という既成概念を破りそうな点だ。デジアンなる言葉から連想される、人工的で無味乾燥な感じがしない。
技術的には電圧増幅段がアナログ、電力増幅段(パワー段)がデジタルで、メーカー側はハイブリッドである点をアピールしている。だがあえてカテゴライズすればやはり「デジアン」である。しかし肝心なのは分類ではなく出てくる音だ。
たとえば805 Diamondは冒頭に挙げたアンプ3機種で試聴済みだが、sa3.0を加えた4機種をブラインドで聴けば、どれがデジアンなのか当てられないだろう。おそらくブラインドで聴いたsa3.0は、ものすごくダンピングの効いたハイエンド・アンプのような印象を与えるかもしれない。
高解像度ハイスピードでキレがよく、高い駆動力でスピーカーを選ばない。10万円台半ばのリーズナブルな価格も魅力だ。おまけにデジアンらしからぬ、引き締まっていながら密度感の高い躍動する低音が出る。「デジアンは好みじゃない」という層にも受け入れられそうなsa3.0は、ひょっとしたらSOULNOTEを大々的にメジャー・ブレイクさせる記念碑的作品になるかもしれない。
【関連記事】
『SOULNOTE sc1.0、鮮烈でハイスピードな切れ味の凄み』
『SOULNOTE dc1.0生産終了、できるなら「この音のまま」仕様だけ変えてほしい』
『SOULNOTEはメジャー路線にシフトするか?』
tag : SOULNOTEsa3.0B&W805DiamondDENONPMA-2000SEMarantzPM-13S2PM-11S2