モノクロームの静謐感、Jeff Rowland Criterion+Model 312 C

●Criterion
■アキュレートな再生ぶりに知性が漂う
物静かなアンプだ。派手にシャウトはしないが力まない歌に説得力のあるシンガー、という印象。音の色彩感はモノトーン、端整で落ち着いた雰囲気のアンプである。
全域に渡り音が引き締まり、音像に滲みがない。温度感が低く、アキュレートな再生ぶりがややもすると無機的に感じられて私は感情移入できなかったが、静謐感のある表現を求める人にはハマりそうだ。
その証拠に、再生させたソースの中ではリリカルで繊細なリッキー・リー・ジョーンズ「Traffic From Paradise」(1993年)が抜群にマッチした。また、ひんやり肌触りの冷たいブラッド・メルドー・トリオ「House On Hill」(2006年)、「Places」(2000年)あたりもぴったりだった。
逆にフィットしなかったのは、明るく陽気な古いスワンプロックやR&Bだ。黒くエネルギッシュなデラニー&ボニー「Accept No Substitute」(1969年)、アーシーで泥臭いリトルフィート「Sailin' Shoes」(1972年)は汗の臭いがせず、ホットなアレサ・フランクリンがすっかり「物静かなアレサ」に変身しているのはシュールだった。
エレクトリックか? アコースティックか? といえばアコースティックな寒色系のソースが似合う。また同じエレクトリック・ギターでも、ディストーションをかけない生っぽい音色の方が持ち味が出そうだ。たぶんいちばん得意なのはクラシックなのだろう。
組み合わせた機器は、スピーカーがConsensus AudioのLightning SE、CDプレーヤーはMETRONOME TECHNOLOGIE CD5 Signature。
個人的な好みをいえば、このアンプに散財するなら好きなCDを10年分買ったほうがいいなと感じたが、スピーカーとCDPは即、お持ち帰りしたい誘惑に駆られた。
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