LUXMAN D-06 vs D-05、兄弟対決でわかった価格差「20万円」の中身

●LUXMAN D-06
■D-06とD-05を1曲ごとに比較試聴する
「では同じ曲を1曲づつ、CDプレイヤーを替えて再生させてください。まずD-06の方からお願いします」
店員さんにこうオーダーし、リスニングポイントに座る。スピーカーはFOSTEX G1300、アンプはLUXMANのL-507uだ。このスピーカーとアンプ、D-06の組み合わせはもう何度もレビューを書いている(文末の【関連記事】を参照のこと)。ひとことでいえば、音の鮮烈さとエネルギー感が圧巻だった。
で、今回の試聴である。まず最初の音が出た瞬間にガク然とした。
「えっ? こんな音だっけ?」
あの劇的なインパクトがない。もちろん悪くはないのだが、まあいえばこりゃデキのいい「普通の音」だ。
「うわぁ。前に書いた2本のレビューは大げさに煽りすぎたなぁ。ぜんぶ書き直さなきゃマズいぞ、こりゃ。しかしなんでこんなに音がちがうんだろう? 今日は体調が悪いのか? それとも機材が温まってないんだろうか?」
うろたえながらあれこれ思考をめぐらせるうち、最初の曲が終わった。
私「じゃあ、今度はD-05の方に替えてください」
店員さん「えっ? いまのがD-05ですよ?」
ガーン。
なんのことはない。店員さんが順番をまちがえていたのだ。
■躍動感と音の厚みに思わぬちがいが
てなわけでやっとD-06の音が出たのだが、なんとまあ、あきれました。まるっきりあのときの「圧倒的な音」なんですな、これが。
まず一小節聴いただけでわかるのが、中低域の変化だ。D-06の方が重心が低く、ズシッと腰がすわった重みがある。地べたに張り付くような地を這うノリである。
ベースギターの音は肉厚で、音の中心部まで具がギッシリ詰まったような密度感がある。音の一粒一粒がグリグリとエネルギッシュに生きており、そのためD-05より躍動的だ。また量感があるだけでなく低域の解像度も高く、ベースギターの音の表面まで「見える」かのようだ。
対するD-05はよくいえば低域がスッキリ絞れており、落ち着いたノリだ。逆にいえば全体のノリと中低音がスカッと軽く、D-06ほどの「どっしり感」はない。
■空間表現でもD-06に軍配が
D-06はD-05より音像の彫りが深く、そのぶん立体感を感じさせる。またD-06はモノラルモードのバーブラウン製DAC、PCM1792Aを2基使っているせいだろうか、左右のセパレーションがいい。(D-05は同じDACをステレオモードで1基のみ搭載)
たとえばイタリア人ピアニスト、Stefano Bollaniのアルバム「ヴィジョンズ」をD-05で再生させると……イントロで左右から別々に湧き上がるように聴こえてくるはずのサックスとクラリネットが、パッと聴きでは両スピーカー間の中央で団子になっているように感じる(よく聴くと左右に分かれているが)。ところが一方のD-06は、イントロを一瞬聴いただけで左右の分離感がハッキリわかる。
■この差に20万円を出すかは価値観の問題だ
さて、ここまでいくつかの要素を見てきたが、ポイントによっては「そんなの気にしないよ」という人もいるだろう。そこに価格差の20万円を出すかどうかは価値観の問題だ。
たとえば「みっちり感」のあるD-06の音を聴き、逆に暑苦しいと感じる人もいるかもしれない。実際、仕事で疲れているなど、軽くサラリと音楽を流しておきたいときにはD-06のような(いい意味で)重い音でなく、あっさりしているD-05の方が向くかもしれない。
一方のD-06は、リスナーがオーディオとがっぷり四つに組むための機器だ。もし私なら借金してでも好みのD-06を買うが、とはいえ予算に応じどちらを選んでも後悔しないデキだと感じた。いつもはブランド志向で海外の機器ばかり聴いているが……いやぁ、日本のCDプレーヤーって優秀ですな。
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