DENON PMA-390SEでアメリカン・ロックを堪能する

■パンチの効いた太い低音が特徴だ
いかにもデノンのアンプらしく、パンチの効いた太く量感のある低音が特徴的だ。そのため躍動感やエネルギー感があり、ストレートに音が飛んでくるソースを再生させるとよさが出る。繊細さや透明感のある静的な音楽より、動的でノリのいい表現が得意なアンプである。
例えば試聴では、アレサ・フランクリンの70年代ファンキー・チューン「Happy Blues」に収録された、ウィリー・ウィークスのブンブン唸るはじけたベースがドンピシャだった。
またおもしろかったのは、今回の試聴のために知人から借りたスキマスイッチ「夏雲ノイズ」があきれるぐらい元気よく鳴ったことだ。J-POPはPMA-390SEのオハコだろう。
一方、定位感や音場感も価格なりにあるが、むしろ「空間で聴かせる」というよりはアグレッシヴな「音の勢い」が魅力のアンプだ。暖色系であたたかみがあり、音の輪郭を丸めた聴き疲れしないリラックス感もセールスポイントだろう。
試聴時に組み合わせた機器は、スピーカー:DENON SC-CX101、CDプレーヤー:DENON DCD-755SEだ。
■ザ・バンドやドクター・ジョンがぴったりハマる
そんなわけでこのアンプは解像度の高さや分解能がどうこういうより、頭を空っぽにして音楽のダイナミズムを楽しむための機器だろう。だから明るく元気な陽性のソースが似合う。
例えば試聴に使ったCDの中では、ジョー・ウォルシュがノリのいいギターリフをギンギンに刻む1976年のライブ盤「You Can't Argue With A Sick Mind」がハマりまくった。
またワイルドで厚みのあるギターサウンドが爆発的なレナード・スキナードのファーストアルバム(1973年)も「らしさ」が出ていた。(本題と関係ないけど、ひさしぶりにレナード・スキナードの名曲『Tuesday's Gone』を聴いて泣きそうになっちゃったよ。青春やなぁ)
てなわけでジャンルを替えてあれこれ試聴してみたが、このアンプには大陸性の開放的で大らかな音楽がピッタリくる。具体的には1950年~60年代のメインストリーム系ジャズのほか、ブラックミュージックをルーツに持つアメリカの音だ。以下、試聴に使ったCDの中からハマったものをいくつか挙げておこう。
(1) ザ・バンド 「 Music From Big Pink 」 ( 1968年 )
(2) ドクター・ジョン 「 In The Right Place 」 ( 1973年 )
(3) ライ・クーダー 「 Boomer's Story 」 ( 1972年 )
(4) デラニー&ボニー 「 Accept No Substitute 」 ( 1969年 )
(5) スライ&ザ・ファミリー・ストーン 「 Fresh 」 ( 1973年 )
(6) ジェームス・ブラウン 「 In the Jungle Groove 」 ( 1986年 )
以前、ONKYO A-5VLのレビューを書いたときにも、試聴時によさが出たCDを何枚か列挙したけど……似合う音楽が笑っちゃうぐらい対照的だよねえ(笑)。まあそれだけアンプのキャラクターが正反対なわけだな、うん。
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