FOSTEX G1300、歯切れのいい軽快なスピード感を味わう

■低域をダイエットした緻密な音作り
スッキリと見通しがよく、キレとヌケが非常にいい。シャープで反応が速く、スパッと切れるナイフのような鳴り方である。音の輪郭がはっきりしたクリアな寒色系で、繊細な透明感がある。解像度も高く、音の表面に描かれている模様まで見えるような描写力だ。
もっとも、オーディオマニア以外の一般ピープルがこの音を聴けば、「おや? 低音が出てないぞ」と感じるだろう。帯域を欲張らず、いい意味で低域を見切ったような音作りをしているからだ。
一般に高音はスピードが速く、相対的に低音は遅い。にもかかわらず「ドウゥ~ン」などと低音に必要以上の量感があると、ただでさえ遅い低音はますます遅くなる。
すると何が起こるか? 高音と低音のスピードに大きな落差ができ、それぞれの音が人間の耳へ届くのに時間差が生まれる。位相がずれ、音像や定位がゆがんでしまう。
で、そんな扱いがむずかしい低域をスッパリ切ったG1300は、音像を正確に描き出す。演奏者が目の前にいるかのような空間表現も得意だ。
■消えるべきタイミングで音が消える
一方、低音に量感がありすぎると、トランジェント(音の立ち上がり/立ち下り)の面でも不利だ。
たとえばベース奏者が「ドッ」と音のおしりを切って歯切れよくミュート(消音)しても、量感があると「ドウーン」と音が尾を引き余韻が残ってしまう。だがG1300のように低音がタイトで反応が速ければ、音が消えるべきタイミングでスッと消える。つまり歯切れがよくなる。
こんなふうに高解像度・ハイスピードでトランジェントがいいG1300は、きわめて現代的なスピーカーである。B&WやJBLのような重いどっしりした古典的な低音は出ないが、引き締まった速い音が好みの人にはおすすめだ。
■厚みのあるLUXMANのL-507u、D-06がベストマッチ
さて今回の試聴ではアンプにLUXMANのL-507u、CDPに同じくLUXMANのD-06を組み合わせた。実はG1300はすでに何度も聴いているのだが、結論からいえば今までの中でいちばんよかった。アンプとCDPがG1300の高い潜在能力を引き出した感じだ。
以前、ESOTERICのデジタルアンプ・AZ-1で聴いたときには「こりゃスピード違反だな」と驚いたが、無機的なカリカリの音で好みじゃなかった。むしろ肉厚なATOLL IN100SEとの組み合わせの方がバランスはよかった。だが今回は見事にそれらのいいとこ取りになっている。まさに組み合わせの妙だ。
L-507uにスピードとエネルギー感を与えられたG1300は、ヒラリ、ヒラリと軽やかに川の飛び石を渡る小鳥のようだった。贅肉のない軽快な音の気持ちよさを味わえた。
またハイスピードな音というのはともすればスカスカの薄味になりがちだが、中低域の太いD-06が厚みを加え、バランスが取れた。逆にいえばD-06が肉厚なぶん、その低域をG1300がキュッと引き締め、ただしCDPが原音から引き出したエネルギー感は元のまま真空パックになっている、みたいな鮮度の高いエネルギッシュな音になった。
たとえばピアノトリオが曲のピークで音数を増やしながら壮絶なインタープレイを繰り広げるBrad Mehldauの「Los Angeles」(アルバム「Places」収録)では、VIORAとDYNAUDIO CONFIDENCE C1の組み合わせでこの曲を聴いたときの劇的な感覚がよみがえった。
■録音が悪いソースは苦手なはずだが……
また最大の収穫はL-507uとD-06を組み合わせたことで、聴ける音楽の幅が広がったことだ。
G1300は反応が速いマグネシウム振動板を使った代償として、金属的な冷たさや無機的な質感が出てしまうところがあまり好みじゃなかった。またソースのアラを厳格に際立たせるために、録音や演奏のラフさが逆に味になっている70年代のR&Bやスワンプのような泥臭い音楽がフィットしなかった。
だがL-507uとD-06で鳴らしたG1300はそんなことはなかった。たとえば「Metheny Mehldau」(2006年)のような音質のいい最近のアルバムが合うのは予想通りだったが、70年代のアレサ・フランクリンやリトルフィートが熱く鳴るのには驚いた。G1300単独ではよさが殺されてしまうソースでも、アンプとCDPが仲立ちになることで味が出たのだ。
それにしてもFOSTEXとLUXMANの組み合わせには「ニッポンの底力」を見せつけられた。いつもは選り好みして海外の機器ばかり聴いているが、いやはや、今回は参りました。
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