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ATOLL IN100SE、人生と音楽を楽しむための弾けるような躍動感を聴け

ATOLL IN100SE

■明るく開放的に鳴るラテン系の味わい

 ATOLL IN100SEは、音楽を楽しく聴かせるために生まれてきたようなアンプだ。弾けるような躍動感があり、おおらかでイキイキと開放的な鳴り方をする。暖色系で適度な艶と柔らかさがあり、いかにもフランスのアンプらしい明るく朗らかな音色だ。

 ナチュラルなテイストで生楽器の再生も得意だが、ソースを選ばずエレクトリックな音楽にもフィットする。特にロックやR&B、ジャズなどの力強いソースがハマるファンキーなアンプである。

 オーディオ機器には国民性や地域性が表れる。例えば今まで試聴したアンプの中で、いちばんATOLLに音が近いのは同じフランスのYBA PASSION 300 INTEGREだ。いや「近い」というより、とても似ている。線が太く、芳醇なワインのように甘い色気を漂わせているところまでそっくりだ。

 またYBAと同様、ATOLLには、鳴らしにくいといわれるDYNAUDIOを朗々と歌わせる駆動力がある。しかも抑制的にではなく、音楽の持つエネルギーを解き放つ方向で鳴らしてくれる。デジタルアンプのようにストイックな制動力をウリにするタイプとは好対照だ。

 聴いているうち、ふと気づくと無意識のうちにカラダでリズムを取っていた――そんな音楽のポジティブな本質に気づかせてくれる楽しいアンプである。

■ 「スピーカーを消す」 空間表現にも注目だ

 DYNAUDIOといえば立体的な空間表現が得意なスピーカーだ。で、意外に知られてないようだが、ATOLLはその特徴をうまく引き出す能力をもっている。アンプ自体がボトルネックにならず、スピーカーの特性が素直に出る。

 例えばDYNAUDIOとATOLLを組み合わせるとスピーカーから音が出ている感じがまるでなく、あたりの空間そのものが鳴っているかのような不思議な感覚が楽しめる。いわゆるスピーカーが消えるという現象だ。

 周囲に広がる音場を観察すると、幅や高さは十分ある。またバンドのドラマーがメンバーのいちばん後ろにいるのがわかる奥行き感もちゃんと表現してくれる。

 それだけでなくドラムの左手にあるハイハットや、左右のシンバルの区別、スネアの高さ、手前のタム、足元にあるバスドラムなど、それぞれの位置が手に取るようにわかる。ATOLLはDYNAUDIOを扱うDYNAUDIO JAPANが輸入しているアンプだが、なるほどそれもうなずける感じだ。

■実売10万台前半で買えるコストパフォーマンスの高さ

 またコストパフォーマンスの高さも魅力のひとつである。例えばIN100SEの希望小売価格は17万8,500円だが、ショップによっては探せば13万円台で手に入るところもある。

 一方、ひとつ下のクラスに当たるATOLL IN50SEの価格は11万5,500円だが、こっちはなんと8万円台で出している店を見つけてびっくりしてしまった。IN50SEの方もずいぶん試聴したが、10~20万円台クラスのスピーカーを鳴らすのに充分な駆動力がある。値段を考えれば、かなりお手ごろだ。

 兄貴分のIN100SEは重厚な音で低域の量感があるが、IN50SEの方はもっと軽快で中音域が立っている。とはいえ基本的な音色や鳴り方は同じだから、単純に予算に合わせて選べばいいだろう。

【コラム】 ATOLLはどこで試聴できる?

ATOLL IN100SEの内部写
※ATOLL IN100SEの内部写真 (クリックで拡大)

 ATOLLは置いているショップが限られるが、DYNAUDIOの輸入代理店であるDYNAUDIO JAPANが扱っているため、DYNAUDIOのある店でなら試聴できる可能性が高い。ATOLLの取扱店は以下のリンク先の通りだ。

●ATOLLの全国取扱店 (左の文字をクリック)

 また東京・新富町にあるDYNAUDIOのショールーム「on and on」でも、ATOLLやDYNAUDIOの試聴はできる。ショールームのホームページも以下に載せておこう。リンク先のページの最下段に電話番号がのっている。東京近郊の人なら足を伸ばしても損はないだろう。

●ショールーム「on and on」 (左の文字をクリック)


【関連記事】

『広い音場と甘く芳しい蜜の味、YBA PASSION 300 INTEGRE』

【関連サイト】

ATOLL Electronique (ATOLL・フランス本社のホームページ)

tag : ATOLLIN100SEDYNAUDIOAudience42IN50SEYBAPASSION300INTEGRE

ONKYO CR-D2、冷たく透き通った真冬の湖のように

CR-D2  ●ONKYO CR-D2

D-112EXLTD  ●ONKYO D-112EXLTD

■シャープでクリアな寒色系の解像感

 非常にシャープ&クリアで解像感がある。冷たく透き通った真冬の湖の底を眺めるかのような音だ。スピーカーは同じONKYOD-112EXLTDで試聴したが、帯域を欲張った上位モデルのD-312ED-302Eと異なり、例えばベースギターは芯のある「コリッ」とした出音でこっちの方が好みだ。システム全体としてはどこまでもクリアで「聴き取れない音はない」という感じの音作りである。

 スピーカーは限定仕様のLTDバージョンだが、コストを抑えて音楽そのものを楽しみたいなら無印のモデルで十分だろう。浮いたお金で好きなCDを買うのが正しい。

■ECMに残したKeith Jarrettの音源がハマる

 さて例によっていろんなCDを再生させてみた。予想通りアメリカ的で大らかなLittle FeatやJesse Ed Davisのような泥臭い音楽はややフィットしないものの、アルバム「Flying Cowboys」(1989年)、「Traffic From Paradise 」(1993年)あたりの涼やかな時期のRickie Lee Jonesはバッチリだった。

 またKeith JarrettがECMに残した音源の中からGary Peacock、Jack DeJohnetteと組んだスタンダーズ・トリオ、またJan Garbarekらと組んだヨーロピアン・カルテットのCDも試してみたが見事にハマった。特に名盤「Standards,Vol.1」(1985年)はバンド全体が紡ぎ出す寒色系の音がONKYOテイストにぴったりで、本当に凍った湖の底が見えてくるような音だった。

 ほかにもPat Methenyのような透明な音質の高さを追求したフュージョン系はもちろん合ったし、私はCDの持ち合わせがないので試せなかったが恐らく打ち込みを多用したJ-POPなどもいけるだろう。

■音楽そのものを楽しみたいならこれで充分だ

 実売ベースでシステム総額7万円のこの音を聴いていると、「もう充分じゃん」と思えてくる。これ以上オーディオにお金をかけるのは、音楽を聴きたいからじゃないだろう、と。

 てなことを思いながらふと隣にあったONKYO A-933を聴いてみると、明らかにCR-D2より中音域が厚く密度感があり力強い。さっきまで「充分だ」と思えていたCR-D2の音の薄さがハッキリわかる……。

 結局のところ、すべての不幸は聴きくらべることから始まるのだ。そしてわずかな音の違いに果てしない散財が始まり、ズブズブと底なし沼へと飲み込みまれて行く。

 特定の機器だけ聴いていれば「こういうものなんだろう」と人間は納得し、案外不満を感じない。つまるところオーディオのコツは、決して上位機種を聴かないことだ。

 もっとも私がそれを実践できているかどうかは、別問題であることはいうまでもない。

(追記・2009年11月20日付)

 先代のCR-D1は、発売されて間もない頃にショップの店頭で、B&WのCM1を鳴らしてみたら違和感がなかったので非常に驚いたことがある。

 さて本題のCR-D2自体は寒色系の音なので実はあまり好みではないのだが、別の機会に暖色系の音を出すスピーカー、TANNOY MERCURY F1 Customと組み合わせてみたらとてもバランスがよかった。スピーカーの音色がシステム全体の音を暖かい方向に振ってくれたからだ。TANNOY MERCURY F1 CustomはCR-D2と違って解像度志向ではないが、実売・約3万円でレシーバとの価格バランスもよく個人的にはおすすめだ。

 このほかONKYO製品が得意とする立体的な空間表現や解像度を重視するなら、ONKYOのD-112系やD-D2Eあたりもいいだろう。

【関連記事】

『ONKYO D-D2E、空間表現が冴える緻密な鳴り』

『ONKYO D-112EX、タイトな低音と中高域のクッキリ感が売りだ』

『ONKYO D-412EX、中高域は精密だが低音に異議アリ』

『ONKYO A-5VL、精密画のように写実的な音を聴く』

tag : ONKYOCR-D2D-112EXLTDD-312ED-302EA-933

DALI LEKTOR 2、ソースを選ばず躍動感のある「元気の素」

DALI LEKTOR 2

■ロックやR&Bをパンチのある音で鳴らせる

 DALI LEKTOR 2をひとことで表現するなら「元気の素」だ。低音の押しが強く躍動感があり、ロックやR&Bのようなインパクトの強い音をしっかり聴かせる。

 同じDALIでもTowerや今はなきMenuet IIはまったりしたムード派で、ソースと聴く人をかなり選ぶ。それに対しLEKTOR 2は何でも鳴らせて、だれでも楽しめるスピーカーだ。

 パンチのきいた低音と解像感のある高音が負けずに主張し合っており、上から下まで音のインパクトが強い。また帯域間のバランスもいい。

 低域と高域のインパクトがともに強いという点では、どことなくB&W 685を髣髴とさせるものがある。いわば「デンマーク人が作った685」だ。ただしLEKTOR 2は、B&Wの中では珍しく寒色系とはいえないB&W 685をもっと思い切り暖色寄りに振った音色である。

 マランツのPM-13S2などいろんなアンプで聴いてみたが、同じDALIのIKON 2と同じく、DENONのPMA-2000SEにとてもよく合っていたのがおもしろかった。(DALIはDENONが輸入・販売しているデンマークのブランドである)

 実売価格はすでに5万を切っているが、予算7万円前後以下の人なら試聴してみて損はない。近年、6~7万円以下のスピーカーはB&W 685を始めコストパフォーマンスの高いものが多く、ユーザにとってはより取りみどりでうれしい悲鳴だろう。

tag : DALILEKTOR2TowerMenuetIIB&W685PM-13S2IKON2PMA-2000SEDENON

DENON PMA-2000SE、げに恐ろしきは組み合わせの妙

DENON PMA-2000SE

■FOSTEX GX100で聴くとこもった音だが……

 初めてPMA-2000SEを聴いたときのスピーカーはFOSTEX GX100だった。このときは店員さんがセレクターの操作をまちがえ、たまたまPMA-2000SEに繋がっただけだ。

「クレルでFOSTEXを鳴らしてみよう」

 そう思い、店員さんにお願いした。だからクレルの音が鳴るとばかり思っていたので、最初に音が出た瞬間、「何このこもった音は?」と驚いた。で、「おかしいんじゃないですか?」と店員さんに確認したら、まちがってPMA-2000SEに繋がっていたというわけだ。このときは2小節ほど聴いただけでうんざりし、すぐほかのアンプに切り替えてもらった。

 2度目にPMA-2000SEを聴いたのは別の店のDENONコーナーだ。そこではDENONが扱うデンマークのスピーカー、DALI IKON 2と単独で繋がれていた。一聴しただけで、前回の音とはまるでちがうことがわかった。

 以前のようなこもり感はなく、中高域の見通しがとてもいい。シンバル類もあざやかで、そのせいか前より解像度が高く感じる。音色的には、低域の押し出しだけでなく繊細さや透明感もカバーしたPMA-SXのテイストに近い。問題の低音もベースの輪郭がきれいに出ており、DENONならではの低域の力感と相まってかなりよかった。

「ほう、DENONの2000番はSEバージョンで相当変わったんだな」

 そう感じた。

■あの音はいったい何だったのか?

 これで終われば話は簡単だ。だが当然、疑問も残った。なぜ初めて聴いたときにはあんな音だったのか? 1回目の試聴環境は2回目と異なり、スピーカーとアンプはセレクターを介して繋がれていた。そしてもう1点は当たり前だがスピーカーがちがうことだ。

 実は2度目の試聴時のDALI IKON 2を聴いたのは初めてだった。だから私はあのスピーカー単体の音の傾向を知らない。ゆえにアンプの音との切り分けができない。

 あのこもり感のなさや中高域の見通しのよさ、低域に輪郭が刻まれるクッキリ感がもしスピーカーの属性だとすれば、私はアンプの音を聴いたのではなくスピーカーの音を聴いていたことになる。これではPMA-2000SEを正確にジャッジしたことにならない。

■よさを殺し合う音、生かし合う音

 で、今度はそれを確かめるため、後日また別のショップへ行ってみた。この店はセレクター方式だが、そのぶん次々に別のスピーカーに切り替えられるので実験には向いている。ただしスピーカーは棚置きだから、そのぶんは割り引いて考える必要はあるが。

 さて、どのスピーカーから試そうか? ちょっと考え、PMA-2000SEが得意そうなロックがうまいMONITOR AUDIOのGS10をまず選んだ。この組み合わせならPMA-2000SEのよさが出ると思ったからだ。

 だが中高域はいいが、低域、特にベースの音が膨らみややボケる。ちょっと続けて聴く気がしない。問題のFOSTEX GX100にも切り替えてみたが、1度目に聴いたときとまるで同じ音だった(笑)。だめだこりゃ。GX100は解像度が高くハイスピード、硬質でシャープな鳴り方をする。だからそういうテイストとは正反対のPMA-2000SEと組み合わせると、互いが互いのよさを殺し合ったかのような音になるのだ。

 あとは「このスピーカーなら低域が出ないからこもらないかも?」などとFOSTEX G1300に替えてみたり、5万前後のスピーカーとしてはデキがいいと思っていたHighland Audio ORAN4301にしてみたり。だがそれぞれのよさがサッパリ出ない。

 特にKRELL KAV-400ximarantz PM-11S2で鳴らしたときには「いい低音を出す」と感じたORAN4301が、あんなボケた低音に成り果てるとは。これにはけっこう驚いた。

■では懸案のDALI IKON 2ではどうか?

 さていろんなスピーカーで鳴らし、局面はいよいよ核心へと向かう。真打ち登場、懸案のDALI IKON 2である。

 まあホントに驚きましたよ、あたしは。

 IKON 2では、いままであれだけダメだったベースの音にはきれいに輪郭ができ、イヤなこもり感がない。高域、特にシンバル類が美しく響き渡り、中高域の見通しのよさもあのときとまったく同じだ。全帯域にわたり音のイキイキ感が増し、全軍躍動と相なった。いやはや、参りました。

 しかしこれだけいろんなスピーカーで鳴らして自分の中で合格点が出ないものが、唯一、DALI IKON 2に繋ぐとあれほど豹変するなんて。これが相性、組み合わせの妙ってやつか。

 そして同時に(恐らく)自社のアンプとの相性のよさを計算した上で商品を選定し、DALI IKON 2を輸入・販売しているのであろうDENONに感心した。プロだなあ、やっぱり。

 だってたまたまDENONコーナーへ行き、DALI IKON 2が繋がれてるときの音だけ聴いたら「すばらしいアンプだ」って印象しか残らないもん。

 で、私みたいに何度もしつこく組み合わせを変えては試す物好きなんてごく一部だろうから、大半の人はそのベストな(組み合わせの)音だけを聴き、「PMA-2000SEはすばらしい」てなイメージだけが脳裏に刷り込まれる……。

 これがリアルなビジネスであり、「世の中」なのだ。

(追記)

 FOSTEX GX100との組み合わせをさらに別の店でも試してみたが、本文中に書いた2つの店よりはマシだった。背後の壁との距離が、それら2店よりあったのが原因かもしれない。ただしDALI IKON 2との組み合わせの方が明らかにいいのは、本文中に書いたのと同じだった。

 IKON 2は低域がかなり締まり気味で、その点が低域の膨らみがちなPMA-2000SEとうまくバランスする理由のひとつだ。一方、FOSTEX GX100は、同じFOSTEXのG1300などとくらべて低域の量感がけっこうある。そこがPMA-2000SEの豊満な低音とバッティングしてしまうのだろう。

 またGX100はアンプの音を脚色せずにそのまま出す。だからよくいえば柔らかくリラックスできる、逆に悪くいえば音のエッジが甘くボケ気味になるPMA-2000SEの音色が丸出しになるのも組み合わせがイマイチな一因だと思う。(2009年11月6日付)

tag : DENONPMA-2000SEGX100IKON2PMA-SXGS10G1300ORAN4301KAV-400xiPM-11S2

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DYNAUDIOというスピーカーに出会ったせいで、こんなブログをやってます。

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CDT:SOULNOTE sc1.0

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