解像度ってそんなに重要か?
オーディオ系の掲示板や専門誌、あるいはショップでもそうだが、ふたこと目には「解像度が高い」てな物言いが口グセの人は多い。「解像度が高い」と言っておけば、それだけでオーディオ機器の優劣を言い切ったようなつもりの人もいる。
たとえば秋葉原のだれでも知ってる某有名オーディオ専門店で、気になるインシュレータがあったので店員さんに聞いてみた。
私「この製品にはどんな特性があるのですか?」
店員さん「解像度が上がります」
私「解像度が高くなる以外の効果はないのですか?」
店員さん「…………」
店員さんは絶句し、それ以上なにも言えなくなった。
■解像度の話しかしない店員さん
「解像度が上がる」と言っておけば、たいていの客は納得するのだろう。だからその店員さんには、それ以上の分析力もなければ語彙もない。必要ないから身につかないのだ。皮肉な話である。
「政治家は有権者を映す鏡である」てな言葉があるが、さしづめ「オーディオショップの店員さんは、オーディオマニアを映す鏡である」みたいな話かもしれない。
このとき私は低域を締めるための方法や機材を探していた。だから趣旨を言うと、その店員さんはたちまち対応不能に陥ってしまった。たまたまその人がそうだっただけで、すべての店員さんが同じではないのだろうが。
■ドラムのスネアがみんなリムショットに聴こえる
「解像度がすべてか?」論に話をもどそう。ピュアオーディオの機器では違いがわかりにくいので、イヤホンを例にしてみる。私はヘッドホンの方はSENNHEISER HD650と同HD25-1II、GRADO SR325iを所有している。iPodにはHD25-1IIを使っているが、ヘッドホンだから夏場は耳が灼熱地獄になる。
で、カナル型のイヤホンを買うために、一定水準をクリアしているとおぼしき製品を試聴して回ったことがある。ありましたよ、すごいやつが(笑)。米Etymotic ResearchのER-4Sである。
こやつはネット上では「解像度が高い」、「フラットでソースを忠実に再現する」とえらい評判だ。熱烈なファンも多い。で、聴いてみたのだが、とても音楽を楽しめるようなシロモノじゃなかった。
ドラムのスネアがみんなリムショットに聴こえるのだ。
というか金だらいを叩いているかのような、と言ったほうがわかりやすい。スネアが金属でできているようにしか聴こえないのだ。実際、解像度は高いのだが、あれのどこが「ソースを忠実に再現」しているのかよくわからない。あんなイヤホンで音楽を聴く気にはとてもなれない。
ER-4Sを耳に挿し、「うん、解像度が高いな」などと悦にいってる図を想像するとこっけい至極だ。や、ひょっとしたらER-4Sは私が聴かないクラシックがハマるのかもしれないし、音は好みの問題だから持ち主が満足してるなら第三者がとやかく言う話ではないけれど。
■解像度がいる音、いらない音
これはイヤホンだけの話じゃなく、当然ほかのオーディオ機器にもいえる。たとえば私は解像度が高いとされるDYNAUDIOのスピーカーを持っている。だが我が家のアンプとCDプレーヤー、スピーカーケーブル、電源ケーブルにはそれぞれ別の趣向があり、DYNAUDIOの解像度の高さを強調するような方向でシステムを組んでるわけじゃない。
低域の解像度が高いDYNAUDIOの特性を生かし、その低域に音の芯や腰、キレ、躍動感、適度な量感が出る機材を組み合わせている。実際、出てくる音はその通りだ。私はもともと70年代のニューオーリンズ・ファンクやスワンプ、R&Bを聴くためにオーディオを新調したから今の音には満足している。
汗が飛び散る70年代のニューオーリンズ・ファンクを聴きながら、「解像度が高くてすごい」とか、「定位と音場感が抜群だ。空間表現がすばらしい」などと言う人はいるのだろうか。いや厳密にいえばいそうだが(笑)、少なくとも私の聴き方とはちがう。
私にとってのオーディオはそれ自体が目的ではなく、音楽を聴くための手段にすぎない。だから70年代のニューオーリンズ・ファンクが気持ちよく聴ける音をオーディオで鳴らしたい。すると当然、解像度より躍動感とかキレや腰、なによりソースの熱気が伝わってこなければ話にならない。
一般に解像度が高い機材は寒色系であることが多く、熱気や躍動感とは反対の方向になる。また高解像度な機器になるほど音が細く、低域ではなく高域に重心が移る。これまたファンクやR&Bには合わない。私にとって解像度の高さって、あんまり意味がないのだ。
■高解像度なお寺の鐘のネを聴くのもアリだけど
オーディオの楽しみ方は、人間の主観の数だけ存在する。だからどこに喜びを見出すかは人それぞれだ。お寺の鐘が鳴る音を高解像度の機材で聴き、楽しむ人がいてもおかしくはない。またそもそも音には興味がなく、メカの構造や組み立てることそのもの、あるいは音が出る技術的なしくみに知的好奇心を満たされる人もいるだろう。だから嗜好の話はここでは置く。
だけど「解像度が高い」とさえ言えばすべてを説明し切った気になる風潮って、どうなんだろう。オーディオの楽しみ方が人それぞれなのと同じで、別に解像度だけが機器の優劣を決めるわけじゃないと思うけどね、私は。
たとえば秋葉原のだれでも知ってる某有名オーディオ専門店で、気になるインシュレータがあったので店員さんに聞いてみた。
私「この製品にはどんな特性があるのですか?」
店員さん「解像度が上がります」
私「解像度が高くなる以外の効果はないのですか?」
店員さん「…………」
店員さんは絶句し、それ以上なにも言えなくなった。
■解像度の話しかしない店員さん
「解像度が上がる」と言っておけば、たいていの客は納得するのだろう。だからその店員さんには、それ以上の分析力もなければ語彙もない。必要ないから身につかないのだ。皮肉な話である。
「政治家は有権者を映す鏡である」てな言葉があるが、さしづめ「オーディオショップの店員さんは、オーディオマニアを映す鏡である」みたいな話かもしれない。
このとき私は低域を締めるための方法や機材を探していた。だから趣旨を言うと、その店員さんはたちまち対応不能に陥ってしまった。たまたまその人がそうだっただけで、すべての店員さんが同じではないのだろうが。
■ドラムのスネアがみんなリムショットに聴こえる
「解像度がすべてか?」論に話をもどそう。ピュアオーディオの機器では違いがわかりにくいので、イヤホンを例にしてみる。私はヘッドホンの方はSENNHEISER HD650と同HD25-1II、GRADO SR325iを所有している。iPodにはHD25-1IIを使っているが、ヘッドホンだから夏場は耳が灼熱地獄になる。
で、カナル型のイヤホンを買うために、一定水準をクリアしているとおぼしき製品を試聴して回ったことがある。ありましたよ、すごいやつが(笑)。米Etymotic ResearchのER-4Sである。
こやつはネット上では「解像度が高い」、「フラットでソースを忠実に再現する」とえらい評判だ。熱烈なファンも多い。で、聴いてみたのだが、とても音楽を楽しめるようなシロモノじゃなかった。
ドラムのスネアがみんなリムショットに聴こえるのだ。
というか金だらいを叩いているかのような、と言ったほうがわかりやすい。スネアが金属でできているようにしか聴こえないのだ。実際、解像度は高いのだが、あれのどこが「ソースを忠実に再現」しているのかよくわからない。あんなイヤホンで音楽を聴く気にはとてもなれない。
ER-4Sを耳に挿し、「うん、解像度が高いな」などと悦にいってる図を想像するとこっけい至極だ。や、ひょっとしたらER-4Sは私が聴かないクラシックがハマるのかもしれないし、音は好みの問題だから持ち主が満足してるなら第三者がとやかく言う話ではないけれど。
■解像度がいる音、いらない音
これはイヤホンだけの話じゃなく、当然ほかのオーディオ機器にもいえる。たとえば私は解像度が高いとされるDYNAUDIOのスピーカーを持っている。だが我が家のアンプとCDプレーヤー、スピーカーケーブル、電源ケーブルにはそれぞれ別の趣向があり、DYNAUDIOの解像度の高さを強調するような方向でシステムを組んでるわけじゃない。
低域の解像度が高いDYNAUDIOの特性を生かし、その低域に音の芯や腰、キレ、躍動感、適度な量感が出る機材を組み合わせている。実際、出てくる音はその通りだ。私はもともと70年代のニューオーリンズ・ファンクやスワンプ、R&Bを聴くためにオーディオを新調したから今の音には満足している。
汗が飛び散る70年代のニューオーリンズ・ファンクを聴きながら、「解像度が高くてすごい」とか、「定位と音場感が抜群だ。空間表現がすばらしい」などと言う人はいるのだろうか。いや厳密にいえばいそうだが(笑)、少なくとも私の聴き方とはちがう。
私にとってのオーディオはそれ自体が目的ではなく、音楽を聴くための手段にすぎない。だから70年代のニューオーリンズ・ファンクが気持ちよく聴ける音をオーディオで鳴らしたい。すると当然、解像度より躍動感とかキレや腰、なによりソースの熱気が伝わってこなければ話にならない。
一般に解像度が高い機材は寒色系であることが多く、熱気や躍動感とは反対の方向になる。また高解像度な機器になるほど音が細く、低域ではなく高域に重心が移る。これまたファンクやR&Bには合わない。私にとって解像度の高さって、あんまり意味がないのだ。
■高解像度なお寺の鐘のネを聴くのもアリだけど
オーディオの楽しみ方は、人間の主観の数だけ存在する。だからどこに喜びを見出すかは人それぞれだ。お寺の鐘が鳴る音を高解像度の機材で聴き、楽しむ人がいてもおかしくはない。またそもそも音には興味がなく、メカの構造や組み立てることそのもの、あるいは音が出る技術的なしくみに知的好奇心を満たされる人もいるだろう。だから嗜好の話はここでは置く。
だけど「解像度が高い」とさえ言えばすべてを説明し切った気になる風潮って、どうなんだろう。オーディオの楽しみ方が人それぞれなのと同じで、別に解像度だけが機器の優劣を決めるわけじゃないと思うけどね、私は。