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DENON RCD-M38+SC-M37、小粒でもエネルギッシュな熱いヤツ

DENON RCD-M38+SC-M37

■力強く元気に鳴る骨太コンポ

 エネルギー感にあふれ、力強く元気に鳴るコンポである。帯域バランスはピラミッド型で、低域にインパクトを持たせた音作りだ。

 艶と暖かみがあり、太くて丸く柔らかい音調なので聴き疲れしない。逆にいえば細かい音まで神経質に聴き分けたい人には向かないが、純粋に音楽を楽しむには十分なレベルだ。

 音場はさほど広くはないが、定位感や音場感はこのクラスとしてはなかなかのもの。楽器の分離感や空間表現はONKYO製品あたりとくらべ一歩譲るが、解像感やクリアさはけっこうある。セット価格が合計4~5万円(実売ベース)でこのレベルの音が手に入るのだから、いい世の中になったものだ。

■パンチの効いた女性ヴォーカルがいい

 試聴では、アレサ・フランクリンやカサンドラ・ウィルソンなど、声質が太くパンチの効いた女性ヴォーカルが持ち味を発揮した。

 また歌だけでなくアレサのアルバム「YOUNG,GIFTED AND BLACK」(1971年)では、バーナード・パーディー(Drums)とチャック・レイニー(Bass)の超グルーヴィな絡みがファンキーに楽しめた。猥雑なコーネル・デュプリーのギターも色っぽい。

 てなわけで持参したCDの中では70年代のR&Bやロックがハマったが、そこは日本の機器らしくJ-POPもいける。またジョシュア・レッドマンやブラッド・メルドー、カート・ローゼンウィンケルなど、90年代以降の録音がいいジャズもよく、あまりソースを選ばない。

■ライバルのONKYO製品、選び分けのコツは?

 さて当ブログで紹介したことのある製品でこのコンポと競合しそうなのは、ONKYOのCR-D2(CDレシーバー)とD-D2E(スピーカー)の組み合わせだろう。(レビュー記事は文末の【関連記事】を参照のこと)

 選び方の目安としては、立体的な広がりのある音をフラットにすっきり聴きたいならONKYO製品、逆にこってり熱い躍動感や低音の迫力がほしいならDENON製品を、てな棲み分けができそうだ。

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『ONKYO D-D2E、空間表現が冴える緻密な鳴り』

『ONKYO CR-D2、冷たく透き通った真冬の湖のように』

tag : DENONRCD-M38SC-M37ONKYOCR-D2D-D2E

ケンウッド R-K711+LS-K711、合計5万円以内の実力やいかに?

ケンウッド R-K711+LS-K711

■シンバルが歯切れよく涼やか

 CDレシーバとスピーカー合わせて実売5万円以内という破壊的なコストパフォーマンスである。

 CDレシーバ・R-K711のプリアンプ部はフルデジタルだが、なるほどデジアンらしく高域(シンバル)が歯切れよく涼やかだ。ピアノの音もよく通る。一方の低音はけっこうボリューム感があり、やわらかく丸い音だ。スピーカー(LS-K711)が棚置きなせいか低音はややこもるが、まあこのセットはセッティングを堅苦しく考えたりせず、ポンと置いて気軽に楽しむのがあり方なのだろう。

 価格的に競合するONKYO CR-D2のような解像感やクリアさはないが、CR-D2みたいに音の輪郭をはっきり出さない分、リラックスして音楽を楽しめる。空間表現や楽器の分離感もなかなかいい。また音の温度感もONKYO製品とは対照的にやや暖かみを感じさせる。このへんのちがいは商品選択のポイントになりそうだ。

 細かい音まで漏らさず聴き取ろう、などという分析的な聴き方でなく、「音楽のある生活」を楽しむためのセット。「えいやッ」でこれを買い、あとは浮いたお金でひたすら好きなCDを買いまくるのが正しい音楽ライフだ。

【関連記事】

「ONKYO CR-D2、冷たく透き通った真冬の湖のように」

ONKYO CR-D2、冷たく透き通った真冬の湖のように

CR-D2  ●ONKYO CR-D2

D-112EXLTD  ●ONKYO D-112EXLTD

■シャープでクリアな寒色系の解像感

 非常にシャープ&クリアで解像感がある。冷たく透き通った真冬の湖の底を眺めるかのような音だ。スピーカーは同じONKYOD-112EXLTDで試聴したが、帯域を欲張った上位モデルのD-312ED-302Eと異なり、例えばベースギターは芯のある「コリッ」とした出音でこっちの方が好みだ。システム全体としてはどこまでもクリアで「聴き取れない音はない」という感じの音作りである。

 スピーカーは限定仕様のLTDバージョンだが、コストを抑えて音楽そのものを楽しみたいなら無印のモデルで十分だろう。浮いたお金で好きなCDを買うのが正しい。

■ECMに残したKeith Jarrettの音源がハマる

 さて例によっていろんなCDを再生させてみた。予想通りアメリカ的で大らかなLittle FeatやJesse Ed Davisのような泥臭い音楽はややフィットしないものの、アルバム「Flying Cowboys」(1989年)、「Traffic From Paradise 」(1993年)あたりの涼やかな時期のRickie Lee Jonesはバッチリだった。

 またKeith JarrettがECMに残した音源の中からGary Peacock、Jack DeJohnetteと組んだスタンダーズ・トリオ、またJan Garbarekらと組んだヨーロピアン・カルテットのCDも試してみたが見事にハマった。特に名盤「Standards,Vol.1」(1985年)はバンド全体が紡ぎ出す寒色系の音がONKYOテイストにぴったりで、本当に凍った湖の底が見えてくるような音だった。

 ほかにもPat Methenyのような透明な音質の高さを追求したフュージョン系はもちろん合ったし、私はCDの持ち合わせがないので試せなかったが恐らく打ち込みを多用したJ-POPなどもいけるだろう。

■音楽そのものを楽しみたいならこれで充分だ

 実売ベースでシステム総額7万円のこの音を聴いていると、「もう充分じゃん」と思えてくる。これ以上オーディオにお金をかけるのは、音楽を聴きたいからじゃないだろう、と。

 てなことを思いながらふと隣にあったONKYO A-933を聴いてみると、明らかにCR-D2より中音域が厚く密度感があり力強い。さっきまで「充分だ」と思えていたCR-D2の音の薄さがハッキリわかる……。

 結局のところ、すべての不幸は聴きくらべることから始まるのだ。そしてわずかな音の違いに果てしない散財が始まり、ズブズブと底なし沼へと飲み込みまれて行く。

 特定の機器だけ聴いていれば「こういうものなんだろう」と人間は納得し、案外不満を感じない。つまるところオーディオのコツは、決して上位機種を聴かないことだ。

 もっとも私がそれを実践できているかどうかは、別問題であることはいうまでもない。

(追記・2009年11月20日付)

 先代のCR-D1は、発売されて間もない頃にショップの店頭で、B&WのCM1を鳴らしてみたら違和感がなかったので非常に驚いたことがある。

 さて本題のCR-D2自体は寒色系の音なので実はあまり好みではないのだが、別の機会に暖色系の音を出すスピーカー、TANNOY MERCURY F1 Customと組み合わせてみたらとてもバランスがよかった。スピーカーの音色がシステム全体の音を暖かい方向に振ってくれたからだ。TANNOY MERCURY F1 CustomはCR-D2と違って解像度志向ではないが、実売・約3万円でレシーバとの価格バランスもよく個人的にはおすすめだ。

 このほかONKYO製品が得意とする立体的な空間表現や解像度を重視するなら、ONKYOのD-112系やD-D2Eあたりもいいだろう。

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tag : ONKYOCR-D2D-112EXLTDD-312ED-302EA-933

DENON RCD-CX1 vs PMA-390SE、グレードの違いより「何を聴くか?」が問題だ

DENON RCD-CX1

DENON RCD-CX1
DENON PMA-390SE

DENON PMA-390SE

「もわーっ」と、こもったいかにもDENONな音(?)

 DENONのレシーバ・RCD-CX1は前に一度聴いたことがあるが、「もわーっ」とこもったハッキリしない音で「いかにもDENONの音だなぁ」、「どこがいいのこれ?」てな印象しかなかった。そこで今回は無謀にも、同じDENONの新製品で格下のPMA-390SEのセットとじっくり聴きくらべてみた。

 するとハッキリわかったのは、「音のよさ」なるものは機器のグレードの違いより、むしろその機器で「何を聴くのか?」に大きく左右されるという定理だった。

PMA-390SEセットの方が明らかにいい!?

 今回、比較試聴したのはRCD-CX1SC-CX101(スピーカー)のセットと、PMA-390SE+DCD-755SESC-A55SG(スピーカー)のセットだ。前者は希望小売価格ベースで合計・約25万円、対する後者のセットは約14万円と、グレードがまったくダンチなお門違い対決である。

 じゃあRCD-CX1のセットから行こう。実は私はJ-POPのCDを1枚も持っていないので、この日のために知人からわざわざ借りておいたスキマスイッチのアルバムをまず再生させてみた。するとRCD-CX1は相変わらずぼんやりこもり切っており、まるで霧の向こうにある音を手探りで聴くようなありさまだった。

「なんだよ、試すまでもなかったな」

 で、今度は同じスキマスイッチをPMA-390SEのセットで再生させてみると……これがあなた、まあ元気よくシャキッと鳴るわけですわ。たとえば低音域はベースギターの音の輪郭がきっちり存在し、音階もきちんと聴き取れる。こもりまくっていたRCD-CX1とはえらい違いだ。

「おいおい、11万円も安いPMA-390SEセットの方が明らかにいいじゃんか」

 まったく驚きである。PMA-390シリーズといえば先代のAEバージョンなら何度か聴いていたが、まあノーコメントな音であんまり興味がなかった。それにひきかえSEバージョンはなかなかやるじゃないか。バンド全体の音の明瞭度が明らかにRCD-CX1セットより上なのである。1本・2万円ちょいのスピーカー・SC-A55SGとのバランスもいいし、「そろそろミニコンポを卒業したい」という人にとっては充分満足なデキだろう。

 念のためスキマスイッチのCDを、両者で交互に何度も再生させてみた。だけどやっぱりそれぞれの印象は変わらない。しかし11万円も安いセットの方がいいなんてありえるのかなぁ……。

 で、お次は何の気なしに、アコースティックなジャズの女性ヴォーカルをRCD-CX1でかけてみた。するってえとあなた、どえりゃーイイんですなこれが。ホントにびっくり。

 ヴォーカルの艶やかさとみずみずしさ、妖艶さがPMA-390SEセットとはまるでケタ違い。ピアノの厚みやドラムのスネアのアタック感も、明らかにPMA-390SEセットよりこっちの方が上だ。えらい豹変ぶりである。

 いったい何が起こったのか?

金額じゃない、よく聴く音楽と「相性のいい機器」を選べ

 両者をくらべると、価格が高いだけあって音の厚みはRCD-CX1セットの方がはるかに上だ。ところが家電量販店の騒がしい店頭では、「厚み」と「曖昧さ」は表裏一体の関係になってしまう。

 ぶ厚い音であるがゆえに周囲の雑音の中に埋没してしまい、単にこもった感じにしか聴こえなかったのだ。(反対にうすい音はそのぶんハッキリしていて、ザワついた環境の中でも聴き取りやすい)

 ところが女性ヴォーカルを再生させると持ち前の音の厚みが人間の声(ヴォーカル)に深みをあたえ、成熟した女性ならではの妖艶な美音として結実したのだ。

 実はこれと似たようなことはONKYOのコンポにも言えていて、価格の安い機器ほど不思議なことにJ-POPが「より映える音」になったりする。で、反対に打ち込みではなくアコースティックなしっとりした音は、総じて価格の高い機器の方がより持ち味が出る。

 たぶんこの差は録音時のミキシングの違いに起因するのだろう。てことは自分の好きな音楽をいい音で聴こうと思えば、単純に価格の高い機器を選ぶのではなく、その音楽と相性のいい機器をチョイスするのがキモになる。

 要は機器のグレードではなく、「何を聴くか?」が問題なのだ。


(追記)

 RCD-CX1は柔らかく角のない音だ。だから音色がそれと同傾向のDENON製スピーカーで鳴らすと柔らかさが強調されすぎ、ボケた音になる可能性が高い。無論そういう音を狙うなら別だが、音像をもっとハッキリさせたいなら少しエッジを効かせるために、FOSTEX GX100B&W685のようなスピーカーを選ぶといいかもしれない。

 またPMA-390SEのセットに関してはアンプとCDP、スピーカー3者のバランスがよく、特段スピーカーを替える必然性は感じなかった。あえて組み替えるなら、ペア5万円前後以下ではJBL 4312M II BKMonitor Audio Bronze BR2tangent EVOなどが候補になるだろう。

【関連記事】

『DENON PMA-390SEでアメリカン・ロックを堪能する』

tag : DENONRCD-CX1PMA-390SESC-CX101DCD-755SESC-A55SGGX100BR2B&W685tangent

スカンジナビア・デザインのtangentっておしゃれだ

EVO-E5
■3点セットで15万円以内の実力やいかに?

「こんな手軽な値段なのにいい音がする」

 戦略的な価格設定で話題のtangentは、1996年にイギリスの技術者が作ったブランドだ。その後、デンマークのEltax社がブランドを引き継ぎ、音だけでなくおしゃれなデザインも注目されている。いわゆる「スカンジナビア・デザイン」である。

 どうです? いかにも女性が好みそうなテイストでしょう。この製品で女性たちがオーディオに興味をもてば、新しいマーケットを育てることにもなる。常連客ばかりで停滞気味のオーディオ業界に風穴を開けてくれそうだ。

 で、ずっと気になっていたのだが、やっと聴く機会に恵まれた。ただし背後でアースウインド・アンド・ファイアの爆音が鳴り響く家電量販店の店頭だから、そのぶんは割り引いて読んでほしい(笑)。

 試聴したのはAMP-50(アンプ)とCDP-50(CDプレーヤー)、それにEVO-E5(スピーカー)の組み合わせだ。すべてtangentブランドであり、総額15万円以内のゾーンである。
AMP-50

■シンバルのリアリティに目を見張る

 一聴して耳に飛び込んできたのは、シンバルの響きだった。tangentセットは音像を明確に出してくる。アコギの切れやピアノのアタック感、シンバルの密度、スネアとタムの張り。ウッドベースもちゃんとエッジが利いている。

 3点セットでバラせないから、この楽器の実在感はアンプの力かCDプレーヤーか、はたまたスピーカーの色なのかがわからない(たぶんスピーカーだろう)。だがともかくセットで聴くと上記の通りだ。

 このクラスのオーディオ機器では、特にシンバルなんぞは「チャリ~ン」とおもちゃみたいな音がしがちだ。だがtangentで聴くドラムのブラッシングやシンバルのリアリティは、同クラスでは頭ひとつ抜けているなと感じさせた。

CDP-50

■ピアノトリオからスワンプまで何でもこい

 すっかりコーフンし、店頭で1時間位あれこれソースをかけてみた。するといかにもヨーロッパの機材らしく、ヨーロピアン・ジャズのピアノトリオのリリカルで枯れた味わいがいい感じだ。

「ふむ。こういう音作りか」

 そう思いつつ、今度は意地悪して70年代のコテコテのアメリカン・スワンプを押し付けてみた。するとまあリズムセクションがハネるわ、ハネるわ。えらい躍動感だ。

「いったい君は何が得意なんだ?」

 思わずそう聞き返してみたくなった。

■Entry Siとの対決の結果は?

 やばいぞこれは。もう時間オーバーだ。だけどすぐ脇には5万円以内のスピーカーがずらりと並んでいる。みんなtangent EVO-E5(スピーカー)と似たようなクラスだ。こりゃ聞きくらべなきゃソンじゃないか?

 これらのスピーカーに固定で繋がっているのは、DENON PMA-1500AEとDCD-1500AEだ。手元の切り替え器で、複数のスピーカーを客が自由に比較試聴できるしくみである。で、まず最初に前から気になっていたALR/JORDAN Entry Siとくらべてみた。

 なんでもEntry Siは、オーディオ専門誌では入門クラスの名器とされているらしい。実際、ネットで検索してもよくひっかかる。ところが両者をくらべてみると、明らかにtangent EVO-E5のほうが好みだった。冒頭で書いたように楽器の響きがよく通るのだ。

 ただEntry Siの名誉のために書き添えると、ひとつはEntry Siが柔らかめの音を出すことにも一因がある。ゆえにうるさい家電量販店の店頭では、エッジが利いたtangentのほうが聴き取りやすい。すると当然、アピール度もちがってくる。

 しかもEntry Siの繋がっているアンプとCDプレーヤーは、これまた「クリアさ」とは対極にある音作りのDENON PMA-1500AEとDCD-1500AEなのだ。おかげでEntry Siの柔らかさはますます加速され、騒音だらけの家電量販店ではえらく不利になってしまう……。

 てなことを考えながら、ひとしきりカチャカチャと切り替え器をいじり倒した。都合、10モデルほどの5万円以内のスピーカーを比較試聴しただろうか。

 テストが終わる頃には意識が朦朧とし、倒れそうになっていたのは事実である。だがうすぼんやりした頭の中で、こんなフレーズが何度も渦巻いていた。

「おい。ひょっとしてtangentがダンチじゃないか?」

tag : tangentAMP-50CDP-50EVO-E5

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DYNAUDIOというスピーカーに出会ったせいで、こんなブログをやってます。

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