窮屈で寸詰まったようなスケール感 特有の「詰まった感じ」がすごく気になる。いかにも口径の小さいスピーカーという鳴り方だ。スケール感がなく寸詰まったような窮屈さと、やや籠もった感じの見通しの悪さがいただけない。同じB&Wの805Dと同様、低域のコントロールも難しそうだ。
またアンプとの組み合わせや環境に敏感に反応し、スタンド設置なのに音がボケたり、逆に棚へ雑に設置されているのにスッキリしていたりする。まったく「女心と秋の空」なスピーカーである。
いや本機の名誉のために言っておくと、コレだけ聴いていれば「いい」と感じるのだ。だが他機種と聴きくらべるとたちまち馬脚を現してしまう。たとえばあるショップで棚置きの個体を聴いたとき、たまたま最初につながっていたDALIのMENTOR2(実売22万円)のほうがはるかにヌケがよく好印象だった。
また「どれぐらい違うのだろう?」と好奇心で聴きくらべた805Dとは、文字通り雲泥の差があった。ベースラインのエッジの明瞭さから音の立体的な広がり感、スケールの大きさ、シンバルの鳴り方まで、すべてにおいてPM1は「ちっぽけなやつ」だった。805DとくらべるとPM1はのっぺり平面的で、定位や音場感もパッとしなかった。
FOCUS160やATC SCM19の方が明らかに上だ これだけではアレなので、各種アンプと組み合わせた感想も書いておこう。まずスッキリ系のLUXMAN L-507uからL-550AXに替えると豊満なグラマラス美人に変わり、「これはこれ」という印象だった。
次にL-550AXからマランツの13にチェンジすると、ハッキリ、すっきり、クッキリな音になる。ただしどっちがいい悪いの次元でなく、好みの問題だ。13はこってり泥臭い70年代のスワンプ・ロックはだめかなと思ったが、そうでもない。意外に万能な一面を見せた。
ただしワイルドなアメリカンロックを熱く鳴らしたいなら、デノンの2000という選択もある。細やかさでは見劣りするが、2000でもまずまずそれなりに鳴った。だが本腰を入れてホットな方向へ行きたいなら、個人的にはもう少し予算を足してL-550AXを選ぶことをおすすめしたいが。
結論としてPM1は、旧805Sを廃版にしてラインナップに
30万クラスがなくなったために、メーカーがあくまで販売戦略上、そのクラスにあてがった機種という気がする。
たとえば予算25~30万なら、議論の余地なくDYNAUDIOのFOCUS160やATC SCM19、FOSTEX G1300MGの方が明らかに上だ。そう考えるとメーカーの都合で生まれたPM1は、いかにもコストパフォーマンスの悪い製品に思える。同じB&W内で比較しても、旧805Sの方が上なのでは? という印象だ。
すでに買う気になってる人はまちがっても上位クラスと聴きくらべない方がいい。805Dなんぞと比較試聴した日にゃ、「うわぁ、こりゃ女房を質に入れてでも805Dを買うのが正解だぞ」って気にさせられる。せっかく買うのにそんな気分になるだけ損である。
(追記)
ただし思い出されるのはCM5が出た当時だ。リリースと同時にショップで試聴したが、CM5も発売直後はひどい音だった。ところがその後、各ショップに展示されている試聴機のエージングが進んだのか、どの店で聴いても真っ当な音に変わって行った。そう考えればPM1も、正当な評価を下せるのは1年後かもしれない。
テーマ : オーディオ機器
ジャンル : 音楽
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