正確性からグルーヴ感は生まれない

「あいつは機械みたいにうまいな」

 生演奏を聴きながら、ミュージシャン仲間や音楽好きの間でよくこんな言葉が交わされる。一見、その演奏者をほめているようだが、実は皮肉を込めたセリフだ。「あいつは機械みたいに正確な演奏をするが、機械みたいに味気なく面白みがないな」という意味である。

 で、実はこれと同じことがオーディオ機器にもいえるのではないか? というのが今回のお題だ。

 バカテク(バカみたいにテクニックのある演奏者)がよくこんな皮肉を言われたりするのだが、一例をあげればジャズ・ベーシストのジョン・パティトゥッチなどはその典型だ。

 彼はものすごく技術のあるプレイヤーだが、どこか無機的で「気持ち」が感じられない。「どうせこのステージは仕事だから」と割り切り、やりたくもない演奏を機械的にこなしてるわけでもないのだろうが……どうもこの人がベースのフレットを指で押さえたときの、その指先に込めた熱い想いが伝わってこない。すごくテクニカルで極めて正確なプレイをするのだが、まるで魂のない機械が演奏しているみたいで、この人の演奏を聴いて「涙を流す自分の姿」が想像できない。

 すなわち演奏の正確性からは、グルーヴ感(人を感動させる音)は生まれないのだ。

 逆に黒人のドラマーなどに多いが、メトロノームで正確に拍を取ったような「ジャストビート」からは微妙に前や後ろにリズムがズレているのだが、でもその微妙な「ゆらぎ」が逆にうねるようなノリを生んでいる、人間臭い強烈な熱気を観客に放射してくる、みたいな味のあるプレイヤーもいる。つまりある種の「ズレ」がグルーヴを生むのだ。

「正確であること」を売りにするハイエンド機器って多いが、実際に聴いてみると味気なくてつまらない音だったりすることも多い。

 かと思えば逆に廉価でノイジーな真空管アンプが、演奏者の「気」をありありと眼前に浮かび上がらせてくれたりする。本体のどっかがガタピシいいながらも、「こいつは熱くてすごいぜ!」と唸ってしまうことがある。

 結局は「どこに価値を見出すのか?」というリスナー個々の価値観次第で、絶対的な正解なんてないのだが、少なくとも私の場合は「原音忠実再生」原理主義みたいな世界とは縁遠いようだ。

テーマ : オーディオ機器
ジャンル : 音楽

【本日の物欲銀座】PRIMARE PRE32は日本に入らないのか?

PRIMARE PRE32

 こやつは日本に入らないのだろうか?

 SOULNOTEのsa4.0Bと組み合わせるとよさそうなのだが。

 ナスペックさん、ご検討の程よろしくお願いします。

Jeremy Pelt / The Talented Mr. Pelt

Jeremy Pelt / Talented Mr. Pelt
Jeremy Pelt (tp)
J.D.Allen (ts)
Danny Grissett (p)
Dwayne Burno (b)
Gerald Cleaver (ds)

Rec.September 15, 2010, NJ
(High Note HCD7216)

ダークでクールなよどんだ世界観

 最近のジャズ・トランペッターで飛び切りいいのをひとりだけ挙げるなら、真っ先に思い浮かぶのがジェレミー・ペルトだ。

 1976年カリフォルニア生まれ、バークリー音大卒の35才。プレイスタイルは「わかりやすく力まない」わびさび系だ。ちょっと60年代マイルスを思わせるダーク&クールなアルバム作りで、バンド・アンサンブルも重視した独特の世界観を提示している。今月末に出る新作「Soul」が楽しみだ。

 一時はストリングス入りのスタンダードをやったり、ワウを使うエレクトリックなサウンドに逆ブレしたりと、方向性が定まらない時期もあった。だが2008年にリリースした「NOVEMBER」から5人のメンバーを完全固定し、すっかり今のスタイルを確立した。以後は前作「MEN OF HONOR」(2010)、そしてこの最新作「The Talented Mr. Pelt」と、いずれ劣らぬ傑作を連発している。

 テナー奏者、J.D.アレンとのフロント2管が気だるく漂い、手数が多くルーズで汚いジェラルド・クリーヴァーのドラミングがバンドの曲調に実にハマっている。(ペルトは他のアルバムでラルフ・ピーターソンともよくやっているが、音数の多いドラマーが好みなのかもしれない)

 バンドの切り口はハードバップをルーツにしながらも往年の新主流派を今風にした感じで、モーダルかつ挑戦的だ。60年代のマイルス・クインテットに似ているといわれるが、ただあれほどテンションが高くナーバスな演奏ではない。むしろ「いかに力を抜けるか?」で勝負したようなアルバムだ。

Hi-Fi調と正反対だが音楽的には「アリ」だ

 さてレコーディング・エンジニアを務めるのは、50〜60年代にブルーノートで一時代を築いた名匠ルディ・ヴァン・ゲルダーだ。彼はこのアルバムで、見通しのきかない濁ったテイストを狙っている。低域がこもり、ベースの音階がこれだけ聴き取りにくい録音も今どき珍しい。たばこの煙がもうもうと立ち込めるバーにいるような音なのだ。

 だがこのヌケの悪い沈鬱な不透明感が、60年代にタイムスリップしたかのように古めかしい、物憂い雰囲気を作り出すことに成功している。現代オーディオが目指すHi-Fi調の音とは正反対だが、バンドのコンセプトにはぴったり合う。オーディオ的にだめな音でも、音楽的には仕掛けとして成立するいい例だ。

 ただひとつ不満をいえば、1〜3曲目はサックスとトランペットの音圧が低すぎ、奥に引っ込んだ鳴り方をしているのが惜しい。そのため音場に前後の奥行き感がない。ところが4曲目になると急に2管の音が大きくなり、前へ出る。そのぶん1〜3曲目とくらべ、サックスとトランペットがリスナー寄りに定位する。この音圧と定位の変わり方には違和感を覚える。

 とはいえ繰り返しになるが、ダークな雰囲気作りに関してはゲルダーの狙いは当たっている。オーディオ好きが考える「いい音」と、制作者側が考える「いい音」はちがうのだ。

ここで全曲試聴できます。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

tag : Jeremy_Pelt J.D.Allen Danny_Grisset Dwayne_Burno Gerald_Cleaver The_Talented_Mr._Pelt MEN_OF_HONOR ルディ・ヴァン・ゲルダー

価格コムに「やらせランキング操作」はないのか?

 一部報道によると、カカクコムが運営する飲食店の人気ランキングサイト「食べログ」で、業者によるやらせが横行していることが発覚した。

 業者は飲食店から料金を受け取り、店をプラス評価するやらせ書き込みをしたり、意図的に人気ランキングを操作していた。カカクコムの調べでは、こういう「やらせ請け負い業者」が少なくとも39社は存在するらしい。

 サンスポ『人気サイト「食べログ」で“やらせ業者”発覚』

「価格.com」のオーディオ・ページを見ていると、人気ランキングにモロに釣られた商品選びをしている人が目立つが、他人の口コミは話半分で見ておくのが正解だ。

PRIMARE CD22、ヨーロッパ的な翳りある空気感

PRIMARE CD22

微かにくすんだ愁いある響き

 ほのかな艶と潤いがあり、ヨーロッパ的な愁いの漂う音色だ。そのためバイオリンなどの弦楽器が艶やかに美しく響く。色付けが濃いわけではないが、微かにくすんだ音色が作る陰影感が味わい深い。

 余韻を感じさせる鳴り方がうまく、フッと音が消えた瞬間の間(ま)がとてもいい。音の消え際に美学がある。憂いや儚さを音で表現できる感性豊かなプレーヤーである。DACチップにはバーブラウンのPCM1792を採用し、192kHz/24bit サンプリングに対応している。

「音色を味わう楽しみ」がある

 帯域バランスがフラットで解像感があり、立体的な空間表現が得意だ。そのため似た傾向のSOULNOTEやNmode、ONKYO製品と同列に論じられがちだが、音色はかなり異なる。

 これら国内メーカーの音色は一様にドライで乾いており、誤解を恐れずにいえば無味無臭だ。PRIMAREとちがい「音色を味わう楽しみ」がない。彼らの武器は音色ではなく、位相特性や過渡特性などもっぱら物理特性的な要素である。この点がフラット系国内ブランドとPRIMAREは大きくちがう。

 CD22はこれら国内ブランドと同様、音のにじみや緩さのない引き締まったタイトな音だ。だが無味乾燥ではない。このタイプの日本製品にありがちな、ある種の「味気なさ」とは無縁だ。むしろ情感豊かで雰囲気がいい。

 そのため試聴では、漂うような浮遊感のあるマイク・モレノの気だるいギターがぴったりフィットした。また翳りのあるピアノを弾くダニー・グリセットのアルバム「STRIDE」もマッチしていた。

 音色にはこだわらず、キレやヌケ、スピード、透明感を優先するならSOULNOTEやNmode、ONKYO製品を。一方、そうした性能に加え、味のある色彩感を楽しみたいならCD22はいい選択だ。

tag : PRIMARE_CD22 SOULNOTE Nmode ONKYO

Jeff Rowland Capri S+Model 102 S、端整で緻密な人工美

Jeff Rowland Capri S

繊細な静けさを表現するアンプ

 端整で分解能が高く、クリアで細やか。スピードやキレもいい。燃え上がるような「熱さ」とは対極にある、繊細さや静けさの表現が得意なアンプだ。

 暖か? 寒か? といえば寒。

 動か? 静か? といえば静。

 その音調通り、試聴ではリリカルで涼やかなリッキー・リー・ジョーンズ「Traffic From Paradise」(1993年)や、「Flying Cowboys」(1989年)がぴったりハマった。

 またマーク・ジョンソンのECM盤「Shades of Jade」(2005年)を再生させると、霧の中を漂うようなジョー・ロヴァーノの気だるいサックスと、アンニュイな倦怠感のある楽曲の雰囲気がよくマッチしていた。組み合わせた機器は、スピーカーがDYNAUDIO CONFIDENCE C1、CDPはESOTERIC X-05だ。

オツに澄ました「よそ行き感」

 ただし個人的な好みでいえば、音がカッチリしていて人工的だ。演奏者のタイム感がまるでメトロノームのように正確すぎ、何かオツに澄ました「よそ行き感」を感じてしまう。演奏者のみなぎるような「気」や生身の体温が感じられない。

 ドカンと「向こう側」へ突き抜ける爆発的な「何か」がないのだ。

 凛とした静寂感はすばらしいが、たとえば曲のヤマ場で演奏者が興奮のあまり冷静さをなくし、バンドのリズムが崩壊する瞬間にこそ音楽のカタルシスがあったりする。正確で緻密なだけでなく、音楽にはそういうダイナミズムがほしい。「行くとき」にはもうズドンと行っちゃって欲しいのだ。

 やはりどうにもICEpowerは肌に合わない。

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『モノクロームの静謐感、Jeff Rowland Criterion+Model 312 C』

tag : Jeff_Rowland Capri_S Model_102_S DYNAUDIO_CONFIDENCE_C1 ESOTERIC_X-05

SOULNOTEが新ブランド開始、第一弾としてケーブル3種を12/21に発売

 SOULNOTEが新ブランド『Fundamental』 (ファンダメンタル) をスタートさせた。第一弾としてラインケーブル2種、スピーカーケーブル1種を12月21日に発売する。

 新製品のケーブルは、SOULNOTE製品の機器内部の配線材として新開発した線材を使っている。ちなみにウワサの新製品、ハイエンド・プリに関してはまだ告知はない。

 新ブランドの詳細に関しては、SOULNOTEのホームページを参照のこと。
 
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『SOULNOTE、80万のプリなんて誰が買うの?』

SOULNOTE、80万のプリなんて誰が買うの?

 ウワサではSOULNOTEが新ブランドを作り、80万のプリを出すらしい。開発中のハイエンド・プリの話は知っていたが、sa4.0と対になるグレードの製品だとばかり思っていたので非常に驚いた。

 ただでさえオーディオ不況でセパの需要が冷え込んでいるというのに、高級イメージのないブランドが出す80万のプリなど誰が買うのだろうか? 経営センスのなさにあきれてしまった。

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『SOULNOTEはメジャー路線にシフトするか?』

tag : SOULNOTE sa4.0B

ONKYO DAC-1000、冷たく透き通った静けさを聴く

ONKYO DAC-1000

あいまいさのないハッキリ感

 寒色系でハッキリくっきり、透明感のあるONKYOらしいテイストだ。「とにかく解像度が高くあいまいさのない音が好きだ」という人には支持されそうである。カッチリ硬く乾いた音色で、オーディオに艶や潤いを求める人には向かない。

 DACチップはTI社バーブラウン製PCM1795を、左右各チャンネルに1基づつ搭載している。

 今回の試聴ではCDプレーヤーと同軸デジタルケーブルで接続し、CDを聴いた。SOULNOTE dc1.0とも軽く比較試聴してみたが問題にならず(クラスが違うから当たり前だ)、結果についてはあえて触れない。

「開放感」とは対極にある厳格な音

 よくいえば落ち着いた静かな音で、躍動感やエネルギー感はさほどない。「弾む感じ」がなくいい意味で淡白だ。つまりノリのいい動的な表現より、静けさを聴かせるのが得意なタイプだ。ゆえにこの音を聴き、「大人しくてつまらない」と感じるか、「クリアに澄み切っていてすばらしい」と感じるかで評価は大きく分かれるだろう。

 聴いていて思わず「笑顔になってしまう」ような楽しい音ではない。眉間にシワを寄せ、何か哲学的な思考をするかのような音調だ。日本人特有の生真面目さ、神経質さが音に表れているといえるかもしれない。

 開放感や大らかさ、リラックス感とは対極にある厳格でナーバスな音の世界。トランペットの高音部やヴォーカルのサ行が耳につき、ぶっちゃけ私には「痛い音」だった。聴き疲れするタイプの人は要注意だ。買う前になるべく試聴で確認しよう。

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『ONKYO C-7000R、繊細で透明感のあるクリアな響き』

tag : ONKYO DAC-1000 SOULNOTE dc1.0

ONKYO C-7000R、繊細で透明感のあるクリアな響き


ONKYO C-7000R

PCM1792を2基搭載する贅の音

 クリアではっきりした音調がONKYO製品らしい。だが同社10万円以下のCDPとは明らかに格が違う。音の厚みと情報量が別世界だ。音符がみっちり詰まった密度感が心地いい。

 TI社バーブラウン製DAC、PCM1792を左右各チャンネルに1基づつ搭載しており、実売10万台前半クラスとしては珍しい贅沢な部材の使い方だ。

 ONKYO製品にしては重心が低く、ズシッとした手応えのある低音を聴かせる。適度なボリューム感はあっても曖昧に膨らませず、一定の量感を保ちながらズンと打ち出してくる。制動が利き、よくコントロールされた低音だ。

 ベースの音はパキパキした輪郭を出す硬い音ではない。むしろONKYOにしては心持ち丸めの音だ。だがデノン製品のような「丸さ」とは違い、音の滲みなどはまったくない。それでいてしなやかな弾力感をしっかり聴かせる。

 ただひとつ気になったのは、ソースがアコースティックなウッドベースであるにもかかわらず、エレクトリックの、しかもTUNEのようなアクティブ・ベース系の現代的な質感に思えた点だ。

 個人的には音さえ気持ちよければ「原音忠実再生」なんてあまりこだわりないし、ひとつの音作りとしてこういうのはアリだと思うが、気になる人は気になるかもしれない。試聴で確認してほしい。

 とはいえ音数の多さや空間表現、音の分離などいずれも水準をクリアしており、誰が聴いても好みからさほど大はずれはしないだろう。

SOULNOTE sc1.0と比較試聴してみた

 さて相対評価をするため、SOULNOTEのsc1.0と聴きくらべてみた。するとJeremy Peltのトランペットが耳に叩きつけてくるようなsc1.0に対し、C-7000Rは耳当たりがいい。剥き出しの音が躍動する感じの「荒ぶるsc1.0」に対し、人生経験を積んだ大人のような落ち着きを感じさせる。

 一方のsc1.0は若い音だ。血気盛んで元気いっぱい。ギラギラと生気をたぎらせながらリスナーに迫ってくる。対するC-7000Rは細やかでていねい、誤解を恐れずに言えば大人しい音だ。

 音像が湧き立つように立ちのぼるsc1.0に対し、C-7000Rはベースとドラムスがズシッと下方へ沈み、全体に音像がぐっと腰を落として鳴る。音場はどちらも適度に広いが、中音域が前に出るぶんsc1.0のほうが奥行きを感じさせる。

 くらべるとsc1.0は高域が耳につき、ソースによってはベースがやや膨らむが、破天荒な音の勢いがある。sc1.0の方が音場に立体感があり、音が前へ飛んでくる。音像が手前にある的を打ち抜いてくるような強い打撃感がある。

洒脱なリッキー・リー・ジョーンズが似合う

 実は最初、C-7000Rだけを聴き、「ONKYO製品にしてはエネルギー感があるな」と意外に感じた。だがsc1.0と聴きくらべると、やはり本機は泥臭くノリのいい楽曲より、リッキー・リー・ジョーンズ「Flying Cowboys」(1989年)のような繊細で洒脱な透明感のあるソースを再生させたほうが魅力的であることがよくわかる。

 ハッキリくっきり、クリアでごまかしがない。ONKYO製品の中では珍しく骨太で厚みや情報量もある。高域が耳に刺さらず、穏やかなのも個人的に気に入った。実売10万台クラスに貴重な一石を投じる、国内メーカーの有力な選択肢が名乗りを上げた感じだ。

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『ONKYO A-7VL、手応えよく躍動する速い低音』

tag : ONKYO C-7000R PCM1792 SOULNOTE sc1.0

プロフィール

Author:Dyna-udia
引退した日曜へぼベーシストです。DYNAUDIOというスピーカーに出会ったせいでオーディオ熱がぶり返し、こんなブログをやってます。

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